おはようございます。大阪市東淀川区の助成金大好き社労士、井上です。

「男性社員から育休を取りたいと相談された。助成金が出るらしいが、何日休ませれば対象になるの?」

「概要の記事はたくさんあるけれど、肝心の『連続日数』や『所定労働日数』、『細かい要件の数字』がはしょられていて、結局自社がもらえるのかどうかわからない…」

そんな中小企業の経営者様や人事・労務担当者の皆さま、お待たせいたしました。

国が支給する両立支援等助成金の「出生時両立支援コース(通称:子育てパパ支援助成金)」は、要件を満たせば最大で60万円(+さらなる加算)を受け取ることができる非常に魅力的な制度です。しかし、お役所の制度である以上、「たった1日日数が足りなかった」「要件の数字を勘違いして計算していた」というだけで、1円も受給できなくなるシビアな世界でもあります。

本記事では、一般的な解説サイトでは省略されがちな「数字にかかわる要件(連続日数、所定労働日数、実施すべき措置の数、割合の端数処理など)」から逃げることなく、すべて網羅して徹底解説します。

最後までお読みいただければ、社会保険労務士などの専門家に相談する前段階として、自社で「完璧な計画」を立てられるようになります。ぜひブックマークして、辞書代わりにご活用ください。

過去の助成金シリーズはこちら

1. 大前提の数字:自社は対象?「中小企業」の厳密な定義


本助成金は「中小企業事業主」であることが大前提となります。助成金の世界では、業種ごとに「資本金の額」または「常時雇用する労働者の数」のどちらか一方を満たしていれば中小企業として扱われます。

業種 資本金の額・出資の総額 常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店・持ち帰り・配達飲食サービス業などを含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種(製造業、建設業、運輸業など) 3億円以下 300人以下

要注意!「常時雇用する労働者」のカウント方法

人数をカウントする際、「常時雇用する労働者」とは誰を指すのか、明確な数字の定義があります。

  • 2か月を超えて使用される者(実態として2か月を超えていれば、雇用期間の定めがない者も、ある者も含む)
  • 週当たりの所定労働時間が、通常の労働者(正社員等)と概ね同等である者

つまり、「週5日・フルタイムで働く長期アルバイト」などは労働者数にカウントしなければなりません。雇用形態がアルバイトだからといって除外してしまうと、上限人数ギリギリの企業様は中小企業の要件から外れてしまう可能性があるため、この数字の定義に十分ご注意ください。

2. 金額と人数の数字:いくら、何人までもらえるのか?


2026年度版の「出生時両立支援コース」には、大きく分けて2つのメニューがあります。それぞれでもらえる金額と「人数の上限」を確認しましょう。

メニュー 対象と要件 支給額
メニュー①:
男性労働者の育児休業取得
(第1種)
自社の男性社員が育児休業を取得した場合に支給される基本的なメニュー。
【人数の上限】1事業年度につき、3人まで。(過去に1人目で受給した企業は、翌年度以降は「2人目」として扱われます)
1人目:20万円
2人目・3人目:10万円
メニュー②:
男性労働者の育児休業取得率の上昇等
(第2種)
社内の「男性育休取得率」を一定の割合以上アップさせた会社に支給されるメニュー。 60万円
(※1企業につき1回限り)

同一の子について、育休を分割して2回取得した場合でも、対象となる労働者は「1名」とカウントします。

メニュー②の取得率計算に関するシビアな数字のルールについては、後述の「第2種の計算式」の章で徹底的に解説します。

3. 【最重要】合否を分ける「休業日数」に関する3つの数字


ここが本記事の核心です。「育休を取らせたけれど助成金が下りなかった」というトラブルの9割は、この日数のルールを誤解していることから起こります。以下の3つの数字を絶対に暗記してください。

① 「出生後8週間以内」に開始すること

対象となる男性社員は、子の出生後「8週間以内」に育児休業を開始しなければなりません。(※出産予定日より前に子が生まれた場合は、出産予定日から数えて8週間以内でも可などの特例はありますが、原則は「産後8週」というスピード感が求められます)。

② 「連続5日以上」の休業であること

「1日だけ」「週末に2日だけ」休むような細切れの育休では助成金の対象になりません。必ず「連続して5日以上」の休業期間が必要です。
この「連続5日」の中には、土日や祝日など、もともと会社の休日である日が含まれていても構いません。(例:水・木・金・土・日 の5日間休んだ場合、連続5日とみなされます)。

③ 休業期間中に「所定労働日が4日以上」含まれていること

ここが最大の落とし穴です!連続5日休んだとしても、その休業期間の中に「本来働くはずだった日(所定労働日)」が「4日以上」含まれていなければ、助成金要件の未達となり、1円も受給することができません。

判定 休業パターンと会社の休日設定 理由
【不支給】
NG例
・【休業期間】木・金・土・日・月 (連続5日間)
・【会社の休日】土・日
休業した5日間のうち、本来の労働日は「木・金・月」の3日しかない。
結論:所定労働日が4日に満たないため不支給。
【支給対象】
OK例
・【休業期間】水・木・金・土・日・月 (連続6日間)
・【会社の休日】土・日
本来の労働日は「水・木・金・月」の4日含まれている。
結論:連続5日以上かつ、所定労働日4日以上をクリア。

※所定労働日が少ないパートタイムの男性社員などの場合、この「4日」のハードルを越えるために、休業期間を10日間や2週間に設定する必要が出てくるケースもあります。カレンダーとシフト表を睨みめっこして、確実に「所定労働日4日」を確保してください。

4. 事前準備の数字:雇用環境整備は「いくつ」実施する?


助成金をもらうためには、育休を開始する「前」に、会社として育休を取りやすい環境を整備する措置を実施しなければなりません。法律(育児・介護休業法)で定められた以下の5つの措置の中から実施します。

  1. 研修の実施(全従業員や管理職向け)
  2. 相談窓口の設置と周知
  3. 自社の労働者の育児休業取得事例の収集・提供
  4. 制度と取得促進に関する方針の周知(社内ポータル掲示など)
  5. 育休申出者の業務の円滑な実施のための業務配分・人員配置の見直し

さて、一般的な解説では「複数実施すること」としか書かれませんが、正確には「自社の就業規則等の申出期限」と「助成金の対象人数(何人目か)」によって、必要な実施数が【2つ〜5つ】の間で細かく変動します。
厚生労働省の要件マトリクスをわかりやすく整理したものが以下の表です。

助成金の対象人数 【パターンA】
申出期限を「2週間前まで」としている会社
【パターンB】
申出期限を「2週間前より長い(1ヶ月前等)」としている会社
1人目の申請時 2つ以上 実施 3つ以上 実施
2人目の申請時 3つ以上 実施 4つ以上 実施
3人目の申請時 4つ以上 実施 5つ(全て) 実施

なぜ申出期限が長い(パターンB)と実施すべき措置の数が増えるのでしょうか?
それは、「1ヶ月前までに申し出ろ」という厳しいルールを社員に課すのであれば、会社側もそれだけ手厚く、育休を取りやすい環境を全力で作るべきだ(だから措置の数を多く求める)、という国の意図があるからです。

必ず「対象の男性社員が育休を開始する日より前」に、規定の「数」の措置を実施し、実施した日付がわかる議事録やメール送信履歴、社内報のコピーなどを保管してください。

5. 第2種(取得率上昇)を狙う!計算式と「端数処理」のルール


メニュー②の60万円を狙う場合、社内の男性育休取得率を「前事業年度などと比較して30ポイント以上上昇(または30%以上アップ)させ、かつ、その年度の取得率が50%以上」になる必要があります。

この「取得率」の計算方法は、以下の数式で厳密に定められています。

【計算式】
ある事業年度において育児休業をした男性労働者の数 ÷ その事業年度内に配偶者が出産した男性労働者の数 × 100

この数式において、絶対に間違えてはいけない「数字のルール」が3つあります。

  • 端数処理は「小数第1位以下は切り捨て」
    もし計算結果が「49.9%」になったとします。四捨五入して50%!と言いたくなりますが、ルール上は切り捨てのため「49%」として扱われます。結果として「50%以上」の要件を満たせず、60万円は支給されません。
  • 同一の子の「分割取得」は「1名」カウント
    1人の男性社員が、1人の子に対して育休を2回に分割して取得したとしても、分子の「育児休業をした男性労働者の数」は2名ではなく「1名」としてカウントします。
  • 年度またぎの取得は「開始日」の年度でカウント
    3月下旬から4月上旬にかけて事業年度をまたいで育休を取得した場合、分子としてカウントされるのは「育児休業を開始した日を含む事業年度(=3月が含まれる年度)」となります。

※分母・分子となる男性労働者は、いずれも「雇用保険の被保険者」に限られます。

6. 実務担当者が悩む!その他の要件とQ&A


その他、実務上で直面しやすい疑問についても、要領やQ&Aから明確な回答を提示します。

Q. 育休中の給与は有給?無給?
A. 有給・無給は一切問いません。
無給であっても助成金の対象となります。ただし、自社の独自の取り組みとして「連続5日のうち最初の3日間は特別有給休暇とする」といった制度にする場合、必ず就業規則(または関連規程)にその旨を明記していなければなりません。規定がないのに実態だけ有給にしていると、要件不備を指摘される可能性があります。
Q. 業務代替の要件について、「たまたま暇な社員」がカバーしてもいい?
A. 条件付きで認められますが、事前検討のプロセスが必要です。
受給には、育休取得者の業務を誰がカバーするのか「業務体制の整備」を行う必要があります。厚労省の要領によれば、「たまたま周囲に手すきの労働者がおり、業務の配分を検討した結果、その労働者に引き継ぐだけで対応できる」と判断された場合も、必要な措置を講じたものとして扱われます。ただし、「もともと手すきな状態であったこと」「検討により業務配分を行ったこと」が書類等で確認できなければなりません。放置して結果的に回った、ではNGです。
Q. 申請期限の具体的な日数は?
A. 「育児休業期間が終了した日の翌日から起算して2か月以内」です。
ただし、休業期間が長い場合(1ヶ月を超えるような場合)は、「育休開始日から1か月を経過した日の翌日から起算して2か月以内」などの特例的な計算が適用されることがあります。「職場復帰したら即、申請書類を準備して2か月以内に提出する」とカレンダーにアラートを設定しておくのが安全です。
Q. 育休を取った本人がすぐに退職してしまったら?
A. 申請日時点で雇用保険被保険者として「継続雇用」されている必要があります。
育休から復帰したものの、助成金を申請する日より前に退職してしまった場合、助成金は受給できません。この助成金はあくまで「雇用を継続し、仕事と育児の両立を支援する」ためのものだからです。

7. まとめ:数字の要件を満たすことは、強い組織を作ること


いかがでしたでしょうか。「出生時両立支援コース」のシビアな数字の要件について徹底解説してきました。
最後に、絶対に外してはいけないポイントを復習します。

  • 「連続5日以上」かつ「所定労働日4日以上」休ませること。
  • 子の「出生後8週間以内」に休業を開始すること。
  • 休業開始前に、申出期限と対象人数に応じた「2〜5つ」の雇用環境整備措置を実施すること。
  • 取得率アップ(第2種)を狙うなら、「小数切り捨て」の厳しい端数ルールに打ち勝つ「50%以上」の目標をクリアすること。
  • 育休終了後、「2か月以内」に申請すること。

一見すると「細かい数字のルールが多くて面倒くさい」と思われるかもしれません。
しかし、このルールの本質は「単なるアリバイ作りの育休を排除し、本当に社員が安心して休み、かつ残された社員の負担も減るような『本物の職場環境』を作ってほしい」という国からのメッセージでもあります。

「連続5日、所定労働日4日以上」抜けても現場が回るように、マニュアルを作成し、業務の属人化を解消する。これは育休に限らず、社員の急な病気や介護、さらには退職リスクに強い、強靭な組織を作ることそのものです。
助成金の最大60万円という金額は、その組織改革にかかるコストを十分に補ってくれる「強力な投資資金」となります。ぜひ本記事の数字をチェックリストとして活用し、漏れのない完璧な準備のもと、男性育休の推進と助成金の獲得を実現してください!

※本記事は2026年度(令和8年度)現行の「両立支援等助成金 支給要領」等の公的資料をもとに作成しております。要件の数字は年度によって変更・微調整される場合がありますので、実際の申請にあたっては専門家にご相談ください。

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