おはようございます。大阪市東淀川区にある「いのうえ社会保険労務士事務所」です。
超高齢化社会を迎えた今、介護離職対策は中小企業事業主にとって避けてとおれない重要な経営課題となっています。会社を支えてきた優秀なベテラン社員が、親や家族の介護を理由に突然辞めてしまうことは、企業にとって計り知れない痛手です。離職防止と人材定着を図るためには、従業員が仕事と介護を両立できる環境づくりが急務と言えます。
しかし、現在実際に「介護休暇」を有給にしている企業は全体の3割にとどまっているのが実情です。無給の休暇のままでは、収入が減ることを心配して取得をためらう従業員も少なくありません。
そこで今回は、令和8年度(2026年度)から新たにスタートした「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース(介護休暇制度有給化支援)」について、社労士がわかりやすく解説いたします。国の助成金を活用して、従業員も会社も安心できる制度を整えましょう!
この記事で分かること
1.助成金の概要:いくらもらえる?対象は?
この助成金は、令和8年4月8日以降に、「介護休暇」制度を新たに有給化し、就業規則等または労働協約に規定した事業主を強力に支援する制度です。
新たに有給化した介護休暇を、10時間以上利用した労働者(雇用保険被保険者)が1名以上発生した場合に、以下の助成金を受け取ることができます。※この助成金は1事業主につき1回限りの支給となります。
| 制度の導入内容 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 基本額(法定通りの日数を有給化) | 30万円 |
| 10日以上の有給休暇制度を導入した場合 | 50万円 |
同じ両立支援等助成金で90万円もらえる方法については下記の記事で詳しく解説しています。
💡 社労士のワンポイントアドバイス:「休業」と「休暇」の違い
育児・介護休業法には、家族の介護のための制度として「介護休業」と「介護休暇」の2種類があります。名前が似ているため非常に混同しやすいですが、今回の助成金の対象となるのは「介護休暇」の方です。
それぞれの違いを分かりやすく表にまとめました。
| 制度名 | 目的と特徴 | 取得できる日数・期間 |
|---|---|---|
| 介護休暇 (★今回の対象) |
通院の付き添いや、介護サービスの手続きなど、突発的・短期的な事象に対応するための休暇制度。時間単位や中抜けでの取得が可能です。 | 対象家族1人につき年間5日、 2人以上の場合は合計10日まで。 |
| 介護休業 | 自ら介護をするため、または介護サービスなどの体制を整えるために、まとまった期間休むための休業制度。雇用保険から介護休業給付金が支給されます。 | 対象家族1人につき通算93日まで。 (最大3回まで分割可能) |
この表の通り、「介護休暇」を無給から有給(給与が減らない状態)に変更することが、本助成金の目的となります。
2.就業規則に規定すべき「5つの条件」と注意点
助成金を受給するためには、対象労働者の介護休暇が始まる「前」までに、就業規則等に以下のすべての内容を明確に規定しておく必要があります。
☑️ 就業規則に必ず盛り込むべき5つの条件
- [ ] 1. 年次有給休暇と同等の賃金が支払われる制度であること
- [ ] 2. 1年度あたり5労働日以上(要介護状態の対象家族が2人以上の場合は10労働日以上)取得できること
- [ ] 3. 時間単位で利用でき、かつ、労働時間の途中に中抜けして取得できること
- [ ] 4. 1日の所定労働時間を変更せずに取得できること
- [ ] 5. 年次有給休暇制度とは別に取得できる独立した制度であること
さらに重要な条件として、有給化する「介護休暇」だけでなく、ベースとなる「介護休業制度」および「介護のための短時間勤務制度」についても適法に就業規則に規定されており、適正に運用されていることが必須となります。この機会に、育児・介護休業法全体の規定を見直すことをお勧めします。
従業員が10名未満で、労働基準監督署へ就業規則を届け出る義務がない事業主の場合、非常に注意が必要です。介護休暇を有給化した際の就業規則等を、必ず全労働者へメールや書面回覧などで「周知」しなければなりません。
その際、「いつ送信・回覧したか」が客観的にわかるエビデンス(送信履歴や回覧への署名記録など)を残しておく必要があります。単に社内掲示板に貼っただけでは助成金の要件を満たさないと判断される恐れがあるため、十分に注意してください。
3.申請期限と必要な書類
制度を整え、実際に従業員が介護休暇を利用したら、以下の期限内に労働局へ申請を行います。
| 申請期限 | 初めて有給の介護休暇制度利用が「10時間」に達した従業員が生じた日の翌日から『2か月以内』 |
|---|---|
| 申請先 | 本社等(人事労務管理の機能がある事業所)の所在地にある労働局 雇用環境・均等部(室) |
| 主な必要書類 | ・支給申請書、支給要件確認申立書 ・就業規則(変更前と変更後の両方) ・対象家族が要介護状態にあることの確認書類(介護保険被保険者証のコピー等で、番号を見えなくしたもの) ・介護休暇申出書 ・出勤簿および賃金台帳(有給で処理されていることの証明) |
⚠️ 過去の受給に関する注意
令和7年度以前に同コース(介護両立支援制度)において、「法を上回る介護休暇制度」を導入してすでに助成金を受給している事業主は、今回の新設助成金を重複して申請することはできませんのでご注意ください。
支給申請書は以下からダウンロードしてください
社労士からのまとめ
介護休暇を有給化することは、従業員にとって「いざという時に収入を減らさずに、安心して家族のケアができる」という強力なセーフティネットになります。これは、企業へのロイヤルティ(帰属意識)を高め、貴重な人材の離職を防ぐための非常に有効な手段です。
制度作りの初期費用や、有給化による人件費の負担を国が直接サポートしてくれるこの新しい助成金は、中小企業にとって絶好のチャンスと言えます。
「就業規則のどこを直せばいいのか分からない」「申請手続きを自社で行うのは不安だ」という場合は、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。制度を正しく活用し、従業員が長く安心して働ける職場づくりを進めていきましょう!
コメントや相談したいことがある方はぜひ公式LINEからお気軽にご連絡ください。
- お電話での
お問い合わせ -
(土日祝も休まず営業火曜定休)
9:00〜18:00

