おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

人事労務担当者の皆様、こんな冷や汗をかくような経験はありませんか?

新入社員の雇用保険の手続き(資格取得届)を後回しにしていたら、なんと数ヶ月でスピード退職してしまった!取得届も出していないのに、喪失届なんてどうやって出せばいいの!?

実はこれ、多くの中小企業から駆け込みでご相談いただく「あるある」なイレギュラーケースなんです。原則として、雇用保険の手続きは決められた期日までに順番通りに行う必要がありますが、実務の現場では予期せぬトラブルが起こることもあります。

今回は、そんな絶体絶命のピンチに直面した担当者様に向けて、イレギュラーな対処法である電子申請での「雇用保険被保険者資格取得届と喪失届を同時に出す方法」について、社労士の視点で解説します。

1. 雇用保険の基本:資格取得届のルール


まずは、イレギュラーな対応を知る前に、法律で定められた「本来の正しいルール」をしっかり確認しておきましょう。

新たに従業員を雇い入れ、その人が雇用保険の加入要件(週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがあること)を満たす場合、会社はハローワークに対して「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する義務があります。

将来は週10時間以上になります。【2028年10月施行】雇用保険「週10時間」への適用拡大で会社・従業員いくらの負担増?

提出期限 雇い入れた日の属する月の「翌月10日」まで
提出先 事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)
添付書類 原則不要ですが、提出が大幅に遅れた場合は出勤簿や賃金台帳、遅延理由書などが必要になります。

例えば、4月1日に入社した従業員の手続きは、「5月10日」までに完了させなければなりません。この期日を守ることが実務の基本中の基本です。

2. 雇用保険の基本:資格喪失届のルール


次に、従業員が退職(離職)した際の手続きルールです。
従業員が会社を辞めた場合、雇用保険の被保険者ではなくなるため、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。

提出期限 離職した日の翌日から起算して「10日以内」
提出先 事業所を管轄するハローワーク
添付書類 離職証明書(本人が離職票の交付を希望する場合など)、出勤簿、賃金台帳、退職理由が分かる書類(退職届など)

資格取得届が「翌月10日」と少し余裕があるのに対し、喪失届は「退職の翌日から10日以内」と非常にタイトなスケジュールになっています。これは、退職した従業員が一刻も早く「失業給付(基本手当)」を受け取れるようにするための配慮です。

3. 【警告】絶対に期日遅れは厳禁!これはあくまで「最終手段」です


さて、ここから「同時に出す方法」というイレギュラーな解説に入りますが、その前に社労士として強く警告しておかなければならないことがあります。

「今回ご紹介する方法は、決して『遅れてもどうにかなる』と推奨するものではありません。」

期日遅れは、会社と従業員の双方に多大なリスクをもたらす「コンプライアンス違反」です。具体的には以下のような重大なペナルティやトラブルが発生する可能性があります。

  • 従業員への重大な不利益: 取得手続きが漏れていると、退職した従業員がハローワークに行っても「あなたは雇用保険に入っていません」と門前払いされ、失業給付が受け取れなくなります。これは労働紛争(損害賠償請求など)に直結する致命的なミスです。
  • 「遅延理由書」の提出義務: 取得手続きが期限から6ヶ月以上遅れると、ハローワークに対して「なぜこんなに遅れたのか」を客観的に説明する遅延理由書を提出し、厳しい指導を受けることになります。
  • 罰則の適用: 雇用保険法では、正当な理由なく届出を怠った事業主に対して「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が定められています。

今回解説する「同時提出」は、あくまで「万が一ミスが起きてしまった時に、労働者の権利を少しでも早く回復させるための救済措置(リカバリー)」です。この点を重々承知の上で、実務の参考にしてください。

4. 期日遅れで雇用保険被保険者資格取得届の出し方


まず、4月5月は資格取得届の処理が終わるまで1か月以上かかります。普通に提出していたらとても間に合いません。ですので、雇用契約書、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、場合によっては遅延理由書、聴取書などの書類をビシッと揃えます。

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その上で以下のような文章を備考欄に書きます。

期日遅れで雇用保険被保険者資格取得届の出し方

ハローワークの職員さんは非常に融通が利きますので、これで最速で処理していただけますと断言はできませんが、可能性は大幅アップです。(一応電話入れておくのがいいです。私はこれで1か月以上が3日になりました。)

5. 雇用保険被保険者資格取得届出してない場合の喪失届の出し方


こちらは元々最優先で見ていただけますが、資格取得届も出してない場合はさらに優先して処理してもらう必要があります。

まず、雇用保険被保険者資格喪失届で一番困るのは「被保険者番号の記入」です。だって資格取得届出してないんですから、新規の場合は番号がわかりません。こういう場合の対処法がこちらです。

雇用保険被保険者資格取得届出してない場合の喪失届の出し方①

被保険者番号にはダミー数字「9999-999999-9」と入れます。

これでは、何がなんだかわかりませんので再度備考欄を利用します。

雇用保険被保険者資格取得届出してない場合の喪失届の出し方②

ここでダミー数字入れてる旨と、資格取得届も出してることをさらにお伝えしておきます。

これで資格取得届の処理が終われば、職員さんがダミー数字を正規の数字に書き換えて離職票を発行してくれます。

 

6. まとめ


今回は、実務の現場で起こりうる「雇用保険の資格取得届と喪失届の同時提出」というイレギュラーな対応について解説しました。

手続きが遅れてしまったことは褒められたことではありません。しかし、ミスに気づいた時点で「どうしよう…」と放置してしまうのが一番やってはいけないことです。放置すればするほど、退職した従業員が失業給付を受け取れない期間が延び、会社が負うリスクは雪だるま式に膨れ上がります。

気づいた時点で即座にハローワークに相談し、本記事で紹介した手順に沿って、必要な書類(出勤簿や賃金台帳、遅延理由書など)を揃えて誠実に対応することが、トラブルを最小限に抑える唯一の道です。

そして何より大切なのは、このイレギュラーな事態を二度と起こさないための仕組みづくりです。入社時の手続きフローを見直し、チェックリストやクラウドシステムを導入するなど、属人的なミスを防ぐ管理体制を構築しましょう。

手続きが複雑で自社だけでは対応しきれない、遅延理由書の書き方が分からない、もうこんなヒヤヒヤする思いはしたくないという経営者・人事担当者の方は、ぜひ社会保険手続きのプロフェッショナルである社会保険労務士にご相談ください。

今なら、健保・雇用の資格取得届はお一人につき3,500円(税抜き)です。詳しくはこちら

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