おはようございます。大阪市東淀川区のいのうえ社会保険労務士事務所です。

企業の労務担当者様、店長様、いつもお疲れ様です。

飲食店や小売業、介護施設など、パート・アルバイトスタッフを中心に「シフト制」で事業を運営している職場で、必ずと言っていいほど直面する悩みがあります。

それが、「シフト制スタッフの年次有給休暇(有給)は、いったい何日付与すればいいのか?」という問題です。

実は、令和8年(2026年)6月19日に、厚生労働省の「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が改正され、有給休暇の付与日数の算定ルールに関する非常に重要な見直しが行われました。

今回は、社労士の視点から、この「シフト制における適正な年次有給休暇の取得」と、実務に大きな影響を与える最新の算定ルールについて、分かりやすく徹底解説いたします。

1.年次有給休暇の付与日数を決める「大原則」とは?


まずは、年次有給休暇が付与されるための大前提をおさらいしましょう。有給休暇の付与日数は、労働者の「所定労働日数」によって決まります。

法律上の大原則では、有給が付与されるタイミングである「基準日(雇入れの日から6か月経過日や、その後1年ごとの日)」の時点で、「今後予定されている1週間の所定労働日数」をベースに付与日数を決定します。もし、週ごとに日数が変動するなど、週以外の期間で所定労働日数が定まっている場合は、「1年間の所定労働日数」をもとに日数を割り出します。

つまり、「あなたは週に〇日働く契約ですね、だから有給は〇日です」と、あらかじめ決まっている労働日数を基準にして計算するのが本来のルールなのです。

2.なぜ「シフト制」の有給計算は難しいのか?


フルタイムの正社員や、「毎週月・水・金の週3日勤務」と決まっているパートタイマーであれば、原則通りに付与日数を決めることは難しくありません。

しかし、シフト制労働契約の場合、具体的な労働日や労働時間が「その都度(毎月のシフト作成時などに)」確定されることがほとんどです。
そのため、「基準日の時点で、向こう1年間に何日出勤する予定なのか?」という所定労働日数を正確に判断することが難しく、実務上で大きな支障が生じていました。

「とりあえず昨年の出勤日数を参考にするしかないか…」「契約書には『週2〜4日』と曖昧に書いているけれど、どう計算すればいいのか…」と、現場の労務管理担当者は頭を抱えていたのです。

3.【重要】令和8年6月改正!「実績」に基づく算定が正式に認められました


このような実務上の混乱を解消するため、規制改革推進会議等での議論を経て、令和8年6月19日に大きなルール変更(通達)が行われました。

結論から言うと、あらかじめ所定労働日数が定められていないシフト制労働者については、「基準日直前の労働日数の『実績』を考慮して、所定労働日数を算出し、有給を付与して差し支えない」と正式に認められたのです。

具体的にどう計算するのか、以下の2つのルールに分かれます。

有給付与のタイミング 「実績ベース」の所定労働日数 算出ルール
① 雇入れから
「6か月経過後」の
初回の付与
まだ1年間の実績がない入社半年後のタイミングでは、
「雇入れから6か月間の労働日数の実績を『2倍』した日数」
を、1年間の所定労働日数とみなして有給の付与日数を算出します。
② 雇入れから
「1年6か月経過後」以降の
2回目以降の付与
すでに1年間フルで働いた実績がある2回目以降の付与タイミングでは、シンプルに
「直近の前年1年間の労働日数の実績」
を、そのまま1年間の所定労働日数とみなして付与日数を算出します。

4.具体的な計算シミュレーション


文字だけでは分かりにくいので、具体的なケースに当てはめてシミュレーションしてみましょう。

【ケース:飲食店で働くアルバイトのAさん(完全シフト制)】
Aさんは、毎月希望を出してシフトが決まるため、事前の所定労働日数が定まっていません。
◆ パターン1:入社から半年後(初回の有給付与)
Aさんの最初の6か月間の出勤日数を数えてみたところ、「合計60日」出勤していました。
この場合、実績の60日を「2倍」にします。【みなし年間所定労働日数】 60日 × 2 = 120日

この「120日」を1年間の所定労働日数とみなします。
労働基準法の付与テーブル(比例付与)に当てはめると、年間所定労働日数が「73日〜120日」のゾーンに該当するため、Aさんの初回の有給付与日数は「5日」となります。

◆ パターン2:入社から1年半後(2回目の有給付与)
初回の有給付与からさらに1年間(入社半年後〜1年半後の期間)働きました。
この1年間の出勤日数の実績を集計したところ、「合計140日」出勤していました。【みなし年間所定労働日数】 前年実績の 140日 をそのまま採用

付与テーブルに当てはめると、「121日〜168日」のゾーンに該当するため、Aさんの2回目の有給付与日数は「8日」へとステップアップします。

5.企業の実務担当者が注意すべきポイント


今回の改正は、シフト制の多い企業にとって、有給管理を適正かつスムーズに行うための「実務上かなり大きな改正」となります。以下のポイントに注意して、社内の労務管理を見直してください。

☑️ 労務管理見直し 3つのチェックポイント

  • [1] 出勤日数の正確な把握(勤怠管理の徹底)
    実績ベースで有給日数が決まるということは、過去の出勤日数を1日単位で正確に把握できていないと、正しい有給付与ができなくなります。タイムカードやクラウド勤怠管理システムを適切に運用し、従業員ごとの基準日と過去の実績日数を自動集計できる仕組みを整えましょう。
  • [2] 労働条件通知書(雇用契約書)の見直し
    完全なシフト制で所定労働日数が定まらない場合は、契約書に「所定労働日数はシフトにより決定する。有給休暇の付与日数は、労働日数の実績に基づき決定する」といった文言を整備しておくと、従業員との不要なトラブルを未然に防ぐことができます。
  • [3] パート・アルバイトへの丁寧な説明
    シフト制スタッフに対して、「あなたの有給は、これまでの出勤実績をもとに適正に計算されて付与されますよ」という仕組みを分かりやすく説明してあげてください。透明性の高い有給制度は、スタッフの定着率向上やモチベーションアップに直結します。

まとめ


シフト制労働者の年次有給休暇は、これまで「予定」の労働日数が不明確なために付与日数の決定が担当者の悩みの種でした。

しかし、令和8年6月の通達により、「過去の出勤実績(半年目は実績の2倍、1年半目以降は前年実績)」をベースに所定労働日数をみなし計算できるという明確なルールが示されました。

有給休暇は労働者の心身の疲労を回復させるための大切な権利です。企業側もこの新しいルールを適正に理解し、従業員が安心して働き、しっかりと休めるクリーンな職場環境を作っていきましょう!

自社の有給管理や勤怠システムの設定、雇用契約書の見直しに不安がある場合は、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。

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