おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

従業員から初めての妊娠報告を受けた際、「おめでとう!」と喜ぶと同時に、いつから休ませて、いくら給付金が出るのか、会社としてどんな手続きをいつまでにしなければならないのか、実務担当者としては一気に不安が押し寄せてくるのではないでしょうか。

また、妊娠した従業員ご本人も、休んでいる間、生活費はどうなるの?、税金や社会保険料は引かれ続けるの?と、お金の不安でいっぱいの状態です。

そこで今回は、「月給25万円の26歳女性(Aさん)が初めて出産する」という具体的なケースを設定し、産休前〜育休終了までの完全なシミュレーションを作成しました。

もらえるお金の具体的な計算方法から、Aさんと会社がそれぞれ「いつ・何を」するべきかというタスクまで、時系列で徹底解説します。実務のチェックリストとして、また従業員への説明資料として、ぜひご活用ください!

■シミュレーションの前提条件


今回のシミュレーションは、以下の条件で進めていきます。

  • ■ Aさん: 26歳女性、初めての出産
  • ■ 月給: 25万円
  • ■ 出産予定日: 2027年1月1日
  • ■ 有給消化: 2026年11月1日 ~ 11月20日
  • ■ 産前産後休業: 2026年11月21日 ~ 2027年2月26日
  • ■ 育児休業開始: 2027年2月27日

■「育児休業給付金」の支給額の計算ルール


まずは、育休中のメインの収入源となる「育児休業給付金」の計算方法から確認しましょう。
育児休業給付金の支給額(月額)は、以下の計算式で算出します。

期間 計算式
育休開始から180日(6カ月)まで 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(給付率)
育休開始から181日(7カ月)以降 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%(給付率)

「休業開始時賃金日額」とは?

原則、育児休業(育休)開始前の6カ月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額を指します。
産前産後休暇を取得している場合は、休暇前6カ月間の給料を180日で割った金額です。

そして、育休開始から180日間は平均賃金日額の67%、181日目以降は平均賃金日額の50%の給付率で支給されるしくみとなっています。

☆こちらもチェック

【2026年完全版】初回の育児休業給付金申請書 記入マニュアル!社労士が教える書き方と注意点

■Aさんの「休業開始時賃金日額」の判定と実務の裏ワザ


休業開始時賃金日額は、原則として育児休業開始前(産休取得の場合は産休前)6か月間の賃金支払基礎日数に基づいて計算されます。

Aさんの産休前の6ヶ月間を遡って見てみましょう。

【1ヶ月目】 2026年11月1日 〜 11月30日
(11/1〜11/20まで有給消化、11/21から産休。有給休暇は「出勤」として基礎日数にカウントされるため、11日以上クリアとなるが、完全月ではない。)
【2ヶ月目】 2026年10月1日 〜 10月31日 (通常勤務)
【3ヶ月目】 2026年9月1日 〜 9月30日 (通常勤務)
【4ヶ月目】 2026年8月1日 〜 8月31日 (通常勤務)
【5ヶ月目】 2026年7月1日 〜 7月31日 (通常勤務)
【6ヶ月目】 2026年6月1日 〜 6月30日 (通常勤務)
【7ヶ月目】 2026年5月1日 〜 5月31日 (通常勤務)

この場合、1か月目が21日以降欠勤(産休)になるので、この月を含めてしまうと平均額が下がり、結果として育児休業給付金の単価が下がってしまいます。

ですが、実務的な取り扱いとしては以下の2つを比較します。
①産休期間の賃金を含めて計算した直近6ヶ月
②産休期間の賃金を含めないで計算した直近6ヶ月

これらを比較し、休業開始時賃金日額が高くなる方が適用されます。(判断は、ハローワークがします)

一般的には②のほうが高くなりますので、Aさんの場合ですと原則2か月目~7か月目(10月〜5月)の合計賃金額を180で割った額が休業開始時賃金日額となります。ハローワークは融通が利くので、申請書の備考欄にその旨(産休開始前の完全月で算定希望など)書くと対応してくれる場合があります。

■時系列シミュレーション:STEP1〜STEP5


STEP1:現在〜産休に入る前まで(〜2026/10/31)

現在は体調を第一に優先してください。医師等から通勤緩和や休憩等の指導を受けた場合は「母健連絡カード」を会社に提出することで、会社は指導内容に応じた必要な措置(時差出勤や休憩時間の延長など)を講じる義務があります。また、11/1〜11/20は予定通り有給消化をしていただき、ゆっくりと出産に向けた準備を進めてください。

◎ Aさんがすること ・産前休業の申出
・会社から連絡受けた産前休業関連の資料提出

STEP 2:産前休業の開始(2026/11/21 〜 2027/1/1予定日)

出産予定日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から、産前休業(産休)に入ります。Aさんの場合は、有給消化明けの11/21が該当します。

免除されるお金:【社会保険料(健康保険・厚生年金)の全額免除】
制度の仕組み: 産前産後休業期間中は、会社が日本年金機構へ産前産後休業取得者申出書を提出することで、ご相談者様ご本人の給与から天引きされる社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が「全額免除」となります。しかも、Aさんの負担分だけでなく、会社負担分も共に免除されます。
メリットの大きさ: 月給25万円の場合、毎月約3万5000円の社会保険料が引かれています。これが免除されるため、実質的な手取りダウンを防ぐ強烈な支援となります。さらに素晴らしいのは、免除期間中も保険料を支払ったものとして扱われる点です。将来受け取る年金額が減ることは絶対にありません。
◎ Aさんがすること ・産前産後休業の開始日を伝える
◎ 会社がすること ・出産育児一時金の手続き
・出産手当金の手続き
・社保免除の手続き

STEP 3:出産(2027/1/1予定)

無事にご出産を迎えられたタイミングで、国からの大きな経済的支援が受けられます。ご出産後は速やかに会社へ実際の出産日、出生した子の氏名・性別を報告してください。会社は子を健康保険に加入させる健康保険被扶養者(異動)届の手続きを行います。

◎ Aさんがすること ・出産日を伝える
・出生から14日以内にお住まいの市区町村に出生届を提出
・出生から15日以内に児童手当の手続き
◎ 会社がすること ・健康保険被扶養者(異動)届の手続き

STEP 4:産後休業(2027/1/2 〜 2027/2/26)

出産の翌日から8週間(56日間)は、労働基準法により働くことが強制的に禁止されている産後休業の期間となります。

もらえるお金:【出産育児一時金】 = 原則50万円
制度の仕組み: 出産費用の経済的負担を軽減するため、健康保険組合または協会けんぽから子ども1人につき原則50万円(産科医療補償制度加入医療機関で出産した場合)が支給されます。
受け取り方: 多くの方は「直接支払制度」を利用します。これは、健康保険組合から医療機関へ直接50万円が支払われる仕組みで、ご相談者様が退院時の窓口で支払うのは50万円を超えた差額分のみで済みます。まとまった現金を事前に用意する負担がなくなるため、非常に便利です。
◎ Aさんがすること ・産前産後休業の終了日を伝える
・育児休業の申し出(※育児休業開始予定日の1か月前まで)
・育児休業関連の資料提出
・育児休業の開始日を伝える
◎ 会社がすること ・育児休業の対象となるかを確認
・提出必要資料の連絡

STEP 5:育児休業の開始(2027/2/27 〜 )

産後休業の翌日から、子どもが原則1歳になる前日まで育児休業(育休)に入ります。ここからが、休業中のメインの収入源となる給付金のスタートとなります。

免除されるお金:【育休期間中の社会保険料全額免除】
産休中に引き続き、育休中も会社が育児休業等取得者申出書を提出することで社会保険料が全額免除されます。さらに、賞与支給月に育休を取得している場合(連続して1ヶ月超の育休に限る)、賞与から引かれる多額の社会保険料(ご相談者様の場合、49万円に対する約7万円の控除)も全額免除され、額面に近い金額が丸ごと手取りになるという絶大なメリットがあります。

もらえるお金:【育児休業給付金(育休手当)】 = 1歳までで約150万円(概算シミュレーション)
制度の仕組み: 雇用保険から支給される、育休中の最強の生活保障です。最初の6ヶ月間はお給料の「67%」、7ヶ月目以降は「50%」が支給されます。原則として2ヶ月に1回、会社がハローワークへ申請手続きを行います。給付金は所得税も雇用保険料もかからない完全非課税です。

【計算式と手当額シミュレーション】
前述した「休業開始時賃金日額」がベースとなります。
月給25万円の満額で算定された場合、賃金日額は約8,333円です。

  • 最初の6ヶ月間(67%): 8,333円 × 30日 × 67% ≒ 月額 約167,493円
    ▶ 6ヶ月分合計 = 約1,004,958円
  • 7ヶ月目以降(50%):(1歳になるまでの残り約4ヶ月間) 8,333円 × 30日 × 50% ≒ 月額 約124,995円
    ▶ 4ヶ月分合計 = 約499,980円
  • 育休手当合計: 約1,504,938円 + 最後の期間分

※社会保険料が免除され、税金も引かれないため、最初の6ヶ月間(67%支給時)は、実質的な手取り額が休業前のお給料の約8割相当にも達します。有給を使って算定ベースを下げなかった恩恵が、ここで爆発的に発揮されるのです。

◎ Aさんがすること ・復職時に利用する保育所などの情報収集・見学・申込
・就業条件の確認
・復職のための準備
◎ 会社がすること ・育児休業給付金の手続き
・出生後休業支援給付の手続き(※夫婦ともに一定の要件を満たす休業をした場合、28日間を限度に賃金13%が上乗せ支給される制度)
・復職時の就業条件などについて確認連絡

■STEP 6:3月以降~ 実際の振り込みスケジュール(目安)


給付金は申請してから実際に振り込まれるまでにタイムラグがあります。以下は、Aさんのケースにおけるお金が振り込まれる時期の目安カレンダーです。

時期(目安) 支給されるお金の種類と概算金額
2027年4月頃 ・出産手当金:約54万円
・育児休業給付金(初回):約33万円
2027年5月頃 ・出生後休業支援給付金:約3万円(※要件を満たした場合)
2027年6月頃 ・育児休業給付金:約33万円
2027年8月頃 ・育児休業給付金:約33万円
2027年10月頃 ・育児休業給付金:約25万円(※給付率が50%に変更)
2027年12月頃 ・育児休業給付金:約25万円
2027年12月31日 育児休業終了(子が1歳に達するため)
2028年2月頃 ・育児休業給付金(最終):約3万円

このように、産休・育休中は長期間にわたり手厚い経済的サポートが受けられます。しかし、そのためには会社と従業員が連携して、各ステップの期日までに確実に手続きを行う必要があります。

手続きの全体像が分からない、従業員への説明や書類作成を任せたいという経営者・人事担当者の方は、ぜひ専門家である社会保険労務士にご相談ください。

コメントや相談したいことがある方はぜひ公式LINEからお気軽にご連絡ください。

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