おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
最近、SNSやYouTubeなどの資格界隈で、とあるニュースが大きな波紋を呼んでいます。
それは、国家資格であるFP(ファイナンシャル・プランニング)技能検定の実施機関の一つ、金融財政事情研究会(きんざい)が発表した「FP養成コース(1級通信+スクーリング)」の新規開講です。
このコース、「受講料33万円を支払い、約5ヶ月間のプログラムを修了すれば、合格率10%台の超難関である『FP1級の学科試験』が免除される」という内容でした。
これに対し、ネット上では「お金で資格を買うのか!」「必死に勉強して合格した1級の価値が下がる!」といった批判的な声が噴出し、ちょっとした炎上状態になっています。
しかし、実はこうした「お金と時間を使って試験を免除する制度」は、FP1級に限った話ではありません。
今回は、この新制度の正しい内容を整理しつつ、他の士業資格の免除事情も交えながら、社労士の実務家目線で「資格の本当の価値」について深く切り込んで解説したいと思います。
【衝撃】FP1級の学科試験が「33万円」で免除になる新コースとは?
まずは、感情的な議論を抜きにして、きんざいが発表した「FP養成コース」の事実関係を整理してみましょう。
このコースは、通信講座とオンライン中心のスクーリング(全8回)を組み合わせた5ヶ月間のプログラムで、修了することでFP技能検定1級の「学科試験」が免除されるというものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受講料 | 330,000円(税込) |
| プログラム期間 | 約5ヶ月間(通信講座+スクーリング全8回) |
| 免除される内容 | FP1級の「学科試験」が免除(※実技試験は別途合格が必要) |
| 申込条件 | 法人(個人事業主)による申し込みのみ |
ここで多くの方が勘違いしている、非常に重要なポイントがあります。
それは、このコースは「個人での申し込みは一切不可」であり、金融機関などの法人が社員を派遣する目的で作られているため、「一般人が個人で33万円を払えば誰でも簡単に取れる」という制度ではないということです。
おそらく、銀行や証券会社が自社の行員・社員に対して、業務上必要なFP1級の資格を確実に取らせるため(箔をつけるため)の法人向けルートとして新設されたものと考えられます。決して「お金さえ積めば誰でもFP1級になれる」という単純な話ではないのです。
※コースの概要やニュースリリースについては、以下のきんざい公式サイトをご参照ください。
▶【新規開講】FP1級学科免除「FP養成コース(1級通信+スクーリング)」
▶FP養成コース 詳細ページ
「お金で資格を買う」はズルい?他の難関資格の免除事情
「試験を受けずに免除されるなんてズルい!」という声が多く上がっていますが、実は日本の士業・難関資格において、時間とお金をかけて試験の一部を免除するルートは昔から存在し、むしろ利用者が増加しているトレンドにあります。
① 税理士の「院免(大学院免除)」
税理士になるためには通常5科目の難関試験に合格する必要がありますが、大学院(修士課程)に進学して修士論文を執筆し、修了することで最大3科目が免除されます。
学費として2年間で200万~300万円程度かかりますが、1科目合格率10%前後の税法科目を確実にパスできるため、現在では新規登録者の約4割近くがこの免除制度を利用しています。
② 中小企業診断士の「養成課程」
中小企業診断士も、1次試験合格後に約200万~300万円の学費を払い、半年~2年間の「登録養成課程」を修了すれば、合格率約18%の2次試験と実務補習が免除されて資格を取得できます。こちらも年々利用者が増えています。
このように、難関試験をストレートに突破する「試験組」と、時間とお金をかけて確実性を取る「養成・免除組」が存在するのは、資格制度における一つの構造であり、FP1級の制度だけが特別「悪」というわけではないのです。
社労士から見た「資格の価値」と実務能力の違い
では、免除制度を利用して取得した資格は「価値が低い」のでしょうか?
現役の社労士として実務の現場に立つ私の意見は、全く逆です。
お客様が真に求めているのは、「試験を何点で突破したか」ではなく、「目の前にある自分の悩みを解決してくれる確かな実務経験と、親身になって寄り添ってくれるコミュニケーション能力」です。
例えば、500時間ガリ勉して一発合格したけれど現場の経験がゼロのFPと、試験は免除ルートを使ったけれど、銀行の窓口で何百人もの資産運用や相続の相談に乗ってきた叩き上げのFP。あなたが自分のお金の相談をするなら、間違いなく後者を選ぶはずです。
資格はあくまで「スタートラインに立つための最低限のライセンス」に過ぎず、真の価値は取得した後の実務での研鑽によって決まります。
ただし、ここで一つ絶対に忘れてはならない厳しい現実があります。
もし「免除ルートでお金で買ったから」と胡座をかき、実務に必要な最新の法令や知識のアップデートを怠ったまま顧客に誤った提案(違法な節税アドバイス等)を行えば、損害賠償請求や資格の剥奪、最悪の場合は税理士法違反等の犯罪行為に問われる重大なリスクがあります。
試験組であれ免除組であれ、お客様の人生を背負うプロフェッショナルとしての責任の重さに一切の差はありません。
【Q&A】FP1級の新制度に関するよくある疑問
最後に、今回のFP1級養成コースに関して、ご相談者様や受験生からよく頂く疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 一般の会社員ですが、個人で33万円払えば申し込めますか?
申し込めません。今回のコースは「法人(個人事業主含む)」からの申し込みに限定されています。企業が人材育成の一環として社員を派遣するための制度であり、個人が直接受講することは現状不可能です。
Q2. このコースを受ければ、完全にFP1級になれるのですか?
いいえ、免除されるのは「学科試験(基礎編・応用編)」のみです。FP1級を取得するためには、コース修了後に別途「実技試験」を受験し、合格する必要があります。(※ただし、実技試験の合格率は例年80%〜90%前後と高めです)
Q3. 試験合格組と免除組で、名刺の肩書きや資格の扱いに違いは出ますか?
法律上や資格の扱い上、全く違いはありません。どちらも同じ「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」として名乗ることができます。お客様から見ても、どちらのルートで取得したかは分かりません。
まとめ:資格の価値を決めるのは「取得後のあなた次第」
「FP1級が33万円で免除」というニュースは、文字面だけ見るとショッキングですが、法人向けの研修制度であることや、他の難関資格にも同様のルートがあることを知れば、そこまで悲観するような話ではありません。
一生懸命に独学で勉強している受験生の方からすれば、複雑な気持ちになるのは痛いほどよく分かります。しかし、あなたが苦労して身につけた知識や「やり抜いた経験」は、決して無駄にはなりません。実務に出た時、必ずその基礎力がお客様を救う武器になります。
私たち社労士も、法改正の波に揉まれながら日々勉強の連続です。資格取得はゴールではなくスタート。これからもお互いに、お客様の利益を第一に考えられる実務家を目指して研鑽を積んでいきましょう!
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