おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

毎年春になると、企業の給与計算担当者様や経営者様から必ずと言っていいほど寄せられるご相談があります。
それが、「4月から雇用保険料率が変わるらしいけど、うちの会社はいつの給与(賞与)から新しい計算に切り替えればいいの?」というお問い合わせです。

令和8年度(2026年度)は、雇用保険料率の引き下げが実施されます。料率が変わるということは、給与天引きする金額が変わるということ。
切り替えのタイミングを間違えると、従業員から保険料を多く取りすぎてしまったり、逆に少なく徴収して後から精算の手間が発生したりと、無用な労使トラブルを引き起こしかねません。

そこで今回は、令和8年度の新しい雇用保険料率の詳細と、実務において「いつから新しい料率に変更すればよいのか」その正しい判断基準を、現役社労士が具体例を交えて分かりやすく解説いたします。

令和8年度(2026年度)の雇用保険料率はどう変わる?


まずは、令和8年度の新しい雇用保険料率を確認しておきましょう。
結論から申し上げますと、令和8年度の雇用保険料率は、前年度から「1,000分の1(0.1%)」引き下げられます。

給与から天引きする「労働者負担分」は1,000分の0.5(0.05%)の引き下げ、会社が納める「事業主負担分」も同様に1,000分の0.5(0.05%)の引き下げとなります。
事業の種類ごとの新しい料率は、以下の表の通りです。

事業の種類 労働者負担 事業主負担 合計料率
一般の事業(オフィスワーク等) 5/1,000 (0.5%) 8.5/1,000 (0.85%) 13.5/1,000 (1.35%)
農林水産・清酒製造の事業 6/1,000 (0.6%) 9.5/1,000 (0.95%) 15.5/1,000 (1.55%)
建設の事業 6/1,000 (0.6%) 10.5/1,000 (1.05%) 16.5/1,000 (1.65%)

※詳細なリーフレットについては、厚生労働省の公式案内をご確認ください。
令和8年度の雇用保険料率はこちらです(厚生労働省PDF)

【超重要】変更の判断基準は「支給日」ではなく「締日」!


新しい料率が分かったところで、一番の悩みの種である「いつの給与から切り替えるのか?」について解説します。

雇用保険料率は、原則として4月1日から翌年3月31日まで適用されます。
ここで最も多い間違いが、「4月に支給する給与だから、4月支給分から新しい料率に変えよう!」と、支給日ベースで判断して変更してしまうケースです。これをやってしまうと、計算期間のズレにより間違った保険料を徴収することになります。

実務における正しいルールは、「4月1日以降に給与の【締日】が到来するものから、新しい雇用保険料率に変更する」というものです。

何月に支払われる給与か(支給日)ではなく、「その給与がいつ締められたものか(締日)」を基準に判断するということを、計算担当者の方は絶対に覚えておいてください。

【一覧表】給与締日・賞与ごとの具体的な変更タイミング


「締日基準」と言われても少しややこしいと思いますので、よくある給与サイクルの具体例を表にまとめました。
御社のルールと照らし合わせて確認してみてください。

給与のサイクル 変更タイミング(新料率の適用) 注意点
月末締め
翌月25日払い
4月30日締め(5月25日払い)から 3月31日締め(4月25日払い)は、締日が3月中なので旧料率のままです。
15日締め
当月25日払い
4月15日締め(4月25日払い)から 締日が4月1日以降に到来するため、4月支給分からいち早く新料率に変わります。
20日締め
翌月10日払い
4月20日締め(5月10日払い)から 3月20日締め(4月10日払い)の給与は旧料率で計算します。

【賞与(ボーナス)の場合】
賞与についても、給与と全く同じ考え方です。「4月1日以降に、賞与計算期間の締日が来た賞与」から新しい料率を適用します。
たとえば、支給日が4月10日であっても、その賞与の計算対象期間(評価期間)が「前年10月~3月末まで」と就業規則で定められている場合、締日は3月31日となるため、旧料率で計算することになります。
賞与の計算期間は就業規則や賃金規程に明記されているはずですので、必ず確認しておきましょう。

給与ソフトの設定忘れに注意!間違えた場合のリスク


このように、会社によって新しい料率へ切り替えるタイミング(月)は異なります。
クラウド型の給与計算ソフト(MFクラウド給与やfreee人事労務など)を使用している場合、自動でアップデートされることもありますが、自社の締日に合わせて正しいタイミングで適用設定を切り替える必要があるソフトも多いです。

もし、料率が引き下げられたにもかかわらず設定変更を忘れ、旧料率(高い料率)のまま従業員の給与から保険料を天引きし続けてしまうと、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反となり、是正勧告や労使トラブルに発展する重大なリスクがあります。

取りすぎてしまった保険料は「不当利得」となりますので、発覚した時点で速やかに従業員へ返金し、過不足の精算処理を行わなければなりません。これは経理・労務担当者にとって非常に手間のかかる作業です。

※賃金の支払い原則に関する基礎知識は、以下のサイトも参考にしてください。
厚生労働省|賃金の支払方法のルールについて

【よくある質問】雇用保険料率変更のQ&A


雇用保険料率の切り替えタイミングについて、顧問先様やご相談者様から特によくいただく質問をまとめました。
実務担当者の方は、給与計算前の最終チェックにご活用ください。

Q1. 新しい雇用保険料率は、いつからスタートですか?

法律上の適用スタートは「令和8年4月1日」です。
ただし給与計算の実務においては、「4月1日以降に給与の締日が来る分」から新しい料率(引き下げられた料率)で計算することになります。

Q2. 4月に支払う給与から、新しい料率に変えてしまっていいですか?

「支給日」で判断するのはNGです!給与は必ず「締日」ベースで考えます。
ですので、3月に締めて4月に支払う給与はまだ「旧料率」のまま。4月に締めて5月に支払う給与から「新料率」に切り替わります。

Q3. うちの会社は「月末締め・翌月払い」ですが、いつから変えますか?

月末締めの場合、最初の新しい料率になるのは「4月30日締め(5月支給)」の給与からです。
直前の「3月31日締め(4月支給)」の給与は、まだ締日が3月中なので旧料率で計算してください。

Q4. 「15日締め」や「25日締め」の場合はどうなりますか?

これも考え方は同じで、締日が4月1日を過ぎているかどうかを見ます。
・15日締め(当月25日払い等)→ 「4月15日締め」の給与から新料率になります。
・25日締め(翌月10日払い等)→ 「4月25日締め」の給与から新料率になります。

Q5. ボーナス(賞与)の計算はどうすればいいですか?

賞与も給与と同じく、支給日ではなく「賞与の評価(計算)期間の締日」が基準になります。
例えば、夏のボーナスが「前年10月~3月末までの評価」で4月や5月に支給される場合、締日が3月末になるため、支給日が4月以降であっても旧料率が適用されるケースがあります。自社の就業規則や賃金規程をしっかり確認してください。

Q6. クラウド給与ソフトなどの設定変更は、どのタイミングでやればいいですか?

「4月1日以降に締日が来る給与」の計算作業を始める前までに、設定を済ませておくのが一番確実です。
自動で切り替わるソフトもありますが、念のため支給月ではなく「締日基準」で正しく適用されているか、必ず一度はテスト計算して確認することをおすすめします。

まとめ:4月になったら給与計算ルールの確認を!


雇用保険料率の変更は、ほぼ毎年のように行われる重要な法改正です。
令和8年度は料率が「引き下げ」となりますが、だからこそ「いつから天引き額を減らすのか」を正確に把握しておく必要があります。

「支給日ではなく、4月1日以降に到来する締日から変える」
この合言葉を給与計算の担当者間で共有し、給与計算ソフトの設定漏れがないよう、4月に入った段階で真っ先にチェックする体制を整えておきましょう。

「うちの会社の給与サイクルだと、結局いつから変えればいいか不安…」「就業規則に賞与の計算期間が書かれていない」など、実務で迷われることがありましたら、専門家である当事務所までお気軽にご相談ください。
給与計算のアウトソーシング(代行)も承っております。

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