おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
「主人が65歳になりました。会社員として厚生年金に入り続けているので、妻である私の年金扶養もそのまま継続ですよね?」
このようなご相談を非常に多くいただきますが、実はここには「知らないと損をする」だけでなく、将来の年金に関わる重大な落とし穴が潜んでいます。
本日は、夫が65歳になったときに「外れる扶養」と「外れない扶養」の違い、そして家計の助けになる「加給年金」の仕組みについて、徹底解説します。
1. 国民年金の「第3号」は65歳で強制終了?知られざる「年金の壁」
まず、一番注意しなければならないのが「国民年金」です。これまで旦那さんの扶養として保険料を1円も払わずに済んでいた「第3号被保険者」の資格は、旦那さんが65歳になった時点で大きな変化を迎えます。
たとえ旦那さんが会社で厚生年金に加入し続けていたとしても、旦那さんが「老齢年金の受給権がある65歳」に達した時点で、国民年金法上の「第2号被保険者」からは外れることになります。(※3号を扶養できるタイプの2号ではなくなります)
第2号被保険者
70歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者を第2号被保険者といいます。これらの方は、厚生年金の加入者であると同時に、国民年金の加入者にもなります。
加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われますので、厚生年金の保険料以外に保険料を負担する必要はありません。
なお、65歳以上の厚生年金の加入者で、老齢または退職を支給事由とする年金給付の受給権がある方は、第2号被保険者とはなりません。参考リンク:第2号被保険者
その結果、奥様が60歳未満である場合、以下の状況が発生します。
- 奥様は「第3号」から外れ、「第1号被保険者」に切り替わる
- ご自身で国民年金保険料(月額 17,510円令和7年度)を納付する義務が生じる
- お住まいの市区町村役場で「種別変更」の手続きが必要になる
この手続きを忘れ、「未納」状態のまま放置してしまうと、将来の老齢基礎年金が減額されるだけでなく、万が一の際の障害基礎年金や遺族基礎年金が受け取れなくなる重大なリスクがあります。
2. 健康保険の扶養は75歳未満まで継続可能!年金とのルールの違い
「年金の扶養が外れるなら、健康保険の保険証も返さないといけないの?」と不安になる方が多いですが、ここはご安心ください。健康保険(協会けんぽ等)は、年金とは全く別のルールで動いています。
健康保険の場合、旦那さんが会社員として社会保険に加入している限り、奥様の年収が130万円(60歳以上は180万円)未満であれば、引き続き扶養(被扶養者)でいられます。
この「健康保険の扶養」が本当に終了するのは、以下のタイミングです。
- 旦那さんが退職したとき
- 旦那さんが75歳になり「後期高齢者医療制度」に移行したとき
- 奥様自身の収入が基準を超えたとき
つまり、「年金の保険料は自分で払う必要があるけれど、健康保険証は今のまま使える」という、ねじれ現象が起きるのです。
3. 家族手当「加給年金」で年間約40万円をキャッチする
年金の負担増に頭を悩ませる奥様に、ぜひ知っておいてほしいのが「加給年金」です。これは、厚生年金版の家族手当のような制度です。
旦那さんの厚生年金加入期間が20年以上あり、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合、旦那さんの老齢厚生年金に年間 415,900円(令和7年度価格)が加算されます。
ただし、この「お得な制度」には非常に厳しい条件があります。
- 奥様自身が「厚生年金加入期間20年以上の老齢年金」の受給権を持っている場合は、加給年金は全額支給停止となります。
- 奥様が65歳になると加給年金は終了し、奥様自身の年金に「振替加算」として引き継がれます(※生年月日により金額は異なります)。
4. 制度の違いと対策まとめ
夫が65歳になったとき、世帯としてどう動くべきかを表にまとめました。
| 制度名 | 65歳以降の扱い | 必要なアクション |
|---|---|---|
| 国民年金 | 扶養(3号)喪失 | 市役所で1号への変更手続き |
| 健康保険 | 扶養継続OK | 特になし(現状維持) |
| 加給年金 | 年間約40万円加算 | 年金事務所への申請 |
このように、日本の年金・保険制度は非常に複雑です。「扶養だから大丈夫」とひと括りにせず、一つひとつの制度を正しく理解し、手続き漏れがないようにしましょう。
【外部リンク】
・日本年金機構:夫が65歳になった時の配偶者の手続き
・日本年金機構:加給年金額と振替加算の仕組み
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