おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

突然会社から「明日から来なくていい」と解雇を言い渡されたら、頭が真っ白になりますよね。
その解雇に納得がいかず、「不当解雇だ!」と会社と争う(係争する)場合、一番の不安の種は「裁判や交渉が終わるまでの生活費はどうするのか?」ということだと思います。

会社と争っている間は、当然ながらお給料は支払われません。
「じゃあ、失業保険(基本手当)をもらえばいいのでは?」と思うかもしれませんが、不当解雇を争うということは「私はまだこの会社の従業員だ(クビにはなっていない)」と主張することになるため、「失業状態」を認めてハローワークで手続きをしてしまうと、裁判等で不利になるのではないかと悩む方が非常に多いのです。

そんな時に労働者の生活を守ってくれるのが、失業保険の「仮給付」という制度です。
今回は、この「仮給付」の仕組みや条件、そして後でトラブルになりやすい「返還」のルールについて、社労士が分かりやすく解説します。

不当解雇で係争中も安心!失業保険の「仮給付」とは?


会社から解雇され、その有効性について労働審判や裁判、内容証明郵便等で争っている期間は、生活費が枯渇してしまう危険があります。
そこでハローワークでは、労働者の当面の生活を保障するために、失業保険(基本手当)を「仮」に支給する制度を設けています。

この仮給付の最大のメリットは、仮給付を受け取ったからといって、「自ら失業を認めた」ことにはならず、裁判や会社との交渉で不利になることはないという点です。
支給される金額や期間も、通常の失業保険(会社都合退職の扱い)と全く同じです。年齢や勤続年数、離職前の給与額に応じて、基本手当日額の45%~80%が支払われます。

「会社と戦いたいけど、生活費がないから泣き寝入りするしかない…」と諦める前に、まずはこの仮給付制度を利用して、しっかりと生活の基盤を確保することが最優先です。

仮給付を受けるための条件と必要な書類


仮給付を受けるためには、通常の失業保険の受給条件(原則として離職前1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上あること等)を満たしている必要があります。
それに加えて、「会社と解雇について争っていること」を証明する書類をハローワークへ提出しなければなりません。

争っている方法 ハローワークへ提出する証明書類の例
裁判 訴状の写し、および裁判所の受理証明書
労働審判 労働審判申立書の写し、および受理証明書
都道府県労働委員会 あっせん申立書の写し、および受理証明書
当事者間の直接交渉 内容証明郵便による会社宛の通知書、および配達証明書

ここで1つ、非常に重要な注意点があります。
仮給付の手続きを行うには、たとえ不当解雇を争っている最中であっても、会社側から「離職票」を発行してもらう必要があります。
「離職票を受け取ったら解雇に同意したことになってしまうのでは?」と不安になるお気持ちは分かりますが、ハローワークの窓口で「現在、不当解雇で係争中です」と証明書類を添えて申し出れば、解雇を容認したことにはなりませんので安心してください。会社が離職票の発行を拒否する場合は、ハローワークから会社へ指導してもらうことも可能です。

※通常の失業保険の手続きや条件については、以下のハローワーク公式サイトもご確認ください。
ハローワークインターネットサービス|基本手当について

要注意!仮給付の「返還」が必要になるケースとは?


失業保険の仮給付は、あくまで「仮」に支給されているお金です。
そのため、会社との争いが決着した際の結果によっては、受け取った仮給付を全額、ハローワークへ返還しなければならないケースがあります。ここが一番の落とし穴ですので、しっかり理解しておきましょう。

【返還が必要になるケース】
①不当解雇が認められ、復職した場合
解雇が無効となった場合、「あなたは解雇された日から今まで、ずっと会社の従業員だった」ことになります。そのため、会社からはその期間の未払い賃金(バックペイ)が最低でも給与の60%がもらえます。賃金をもらえる以上、「失業状態」ではなかったことになるため、仮給付は返還しなければなりません。

②解雇を撤回させ、和解金をもらって合意退職した場合
「解雇は無効にできたが、もうこんな会社には戻りたくない」として、一定の解決金(和解金)を受け取って合意退職するケースが実務では一番多いです。この場合も、「解雇日から和解成立日までは在籍していた」という扱いになり、その期間の賃金相当額を受け取るため、仮給付は返還対象となります。

※解雇日を和解成立日にした場合は、和解金は賃金ではありませんので返還は不要です。

「せっかくもらったお金を返すなんて損だ」と思うかもしれませんが、会社から支払われる未払い賃金や和解金(給与の100%相当など)の方が、失業保険(給与の45~80%)よりも圧倒的に金額が大きいため、結果的に労働者が損をすることはありません。

なお、裁判の結果「解雇は正当だった(有効だった)」と判断された場合や、係争を途中で諦めた場合は、結果的に「本当に失業していた」ことが確定するため、返還の必要はありません。そのまま通常の失業保険として受給できます。

【よくある質問】失業保険の仮給付に関するFAQ


不当解雇時の失業保険手続きについて、ご相談者様からよくいただく疑問をまとめました。

Q1. 仮給付のお金を使ってしまった場合、返還はどうすればいいですか?

和解金やバックペイ(未払い賃金)が会社から支払われたら、そのお金からハローワークへ一括で返還するのが一般的です。弁護士等に依頼している場合は、和解金の中から優先してハローワークへの返還手続きを行ってくれることが多いです。

Q2. 返還を後回しにしたり、黙っていたりするとどうなりますか?

和解等で雇用関係が存続していたと確定したにもかかわらず、ハローワークへ報告せず返還を怠ると、悪質な「不正受給」とみなされ、受け取った金額の全額返還に加えて、その2倍に相当する額の納付を命じられる「3倍返し」の厳しい罰則が適用されるリスクがあります。争いが決着したら、必ず速やかにハローワークへ報告してください。

Q3. 労働審判ってどんな制度ですか?

通常の裁判よりも短期間(原則3回以内の期日)で、解雇や残業代などの労働トラブルを柔軟に解決するための法的手続きです。不当解雇を争う際、スピード解決を目指して多く利用されています。
裁判所|労働審判手続について

まとめ:不当解雇で悩んだらまずは生活基盤の確保を


突然の不当解雇は、精神的にも金銭的にも労働者を極限まで追い詰めます。
しかし、「失業保険の仮給付」という制度を知っていれば、当面の生活費を確保しながら、会社に対して正当な権利を主張し、戦うことができます。

不当解雇を立証するには、会社からの解雇理由証明書の取り寄せや、労働局へのあっせん申し立てなど、専門的な知識が必要です。
「これは不当解雇ではないか?」「会社とどう戦えばいいか分からない」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、まずは専門家である当事務所までお気軽にご相談ください。

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