おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
連休明けや週初めの朝、突然会社にこんな電話がかかってくることが増えています。
「私、〇〇(退職代行業者)の者ですが、御社の△△さんから退職の依頼を受けまして…」
経営者や上司の方からすれば、
「えっ?昨日まで普通に働いてたのに?」
「なんで直接言いに来ないんだ!ふざけるな!」
と、頭が真っ白になったり、怒りが湧いてきたりするのは当然です。
しかし、ここで感情的に怒鳴ったり、電話をガチャ切りするのは絶対にNGです。
対応を間違えると、SNSで晒されたり、未払い賃金トラブルに発展したりするリスクがあるからです。
本日は、もし退職代行から電話が来たときに、会社としてどう冷静に対応すべきか、「3つのステップ」で解説します。
【Step1】相手の「身元」を確認する(ここが最重要!)
まず最初にやるべきは、電話の相手が「誰(どの種類の業者)」なのかを確認することです。
退職代行には、大きく分けて3つの種類があり、それぞれ「会社が交渉に応じる義務があるかどうか」が異なります。
| 業者の種類 | 会社側の対応 |
|---|---|
| ① 民間の代行業者 (株式会社など) |
交渉に応じる必要なし。 彼らはあくまで「本人の意思を伝える使者」にすぎません。 有給休暇の買取や退職日の調整などの「交渉」を行うことは法律(弁護士法72条)で禁止されています。 「連絡事項は承りました」と事務的に対応すればOKです。 |
| ② 労働組合 (ユニオン) |
交渉に応じる義務あり。 団体交渉権があるため、無視すると不当労働行為になるリスクがあります。 |
| ③ 弁護士 | 法的な代理人として対応が必要。 全ての交渉権限を持っています。会社側も顧問弁護士や社労士に相談することをお勧めします。 |
最近増えているのは「①民間の代行業者」です。
もし彼らが「有給を全部買い取れ」「即日退職を認めろ」と強気で交渉してきた場合は、「交渉権限のない方とはお話しできません」と毅然と伝えて構いません。
【Step2】「即日退職」は認めなくていい?(法律のルール)
代行業者はよく「今日付けで辞めます(明日から出社しません)」と言ってきます。
しかし、民法では以下のように定められています。
民法第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり、会社が合意しない限り、法律上は「申し入れから2週間」は退職になりません。
その期間は「欠勤」扱いにするか、本人の希望があれば「有給休暇」を消化させるか、という処理になります。
※やむを得ない事由がなく雇用期間があらかじめ決められている場合(1年契約等)は、契約期間が満了するまでは退職できません。
ただし、「絶対に2週間は辞めさせない!」と意地になって出社を命じても、本人が来る可能性は低いですし、トラブルが長引くだけです。
実務的には、「もう来ない人の社会保険料を払うのも無駄」と考え、会社側が退職日を早めてあげる(合意退職にする)ケースが大半です。
【Step3】淡々と「事務手続き」を進める
退職が確定したら、あとは感情を捨てて事務的に手続きを進めましょう。
これ以上関わりたくない場合は、本人と直接連絡を取らず、全て郵送で済ませるのが一番の近道です。
- 会社が回収するもの: 健康保険証、社員証、制服、貸与PC・スマホなど
- 会社が送るもの: 離職票、源泉徴収票、私物の返却など
「郵送で送ってください」という書面を内容証明などで送るのが確実です。
離職票の発行手続きについては、ハローワークの案内も参考にしてください。
参考:雇用保険被保険者資格喪失届(ハローワークインターネットサービス)
まとめ:去る者は追わず、リスク管理を
手塩にかけて育てた社員に「代行」を使われるのはショックですし、腹立たしいものです。
しかし、そこで感情的に戦っても、会社にメリットは一つもありません。
「高い勉強代だった」と割り切り、「なぜ代行を使われたのか?(職場環境に問題はなかったか)」を見直すきっかけにすることが、残った社員を守ることにも繋がります。
「うちはどう対応すればいい?」
「離職票の備考欄はどう書けばいい?」
そんなお悩みがあれば、一人で抱え込まずにご相談ください。
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