おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
厚生労働省の労働政策審議会より、これからの労災保険制度のあり方を決定づける重要な「建議(労災保険制度の見直しについて)」が公表されました。
今回の見直し案は、長年の課題であった「男女差の解消」や、近年の精神疾患労災の増加に対応した「時効の延長」など、制度の根幹に関わる大きな変更が含まれています。
本日は、公表された建議の内容に基づき、今後予定されている法改正のポイントを詳しく解説します。
※本記事は、以下の厚生労働省公表資料に基づき作成しています。
参照元:労働政策審議会建議「労災保険制度の見直しについて」を公表します(厚生労働省)
参照元:労災保険制度の見直しについて(報告)PDF
1. 【給付】遺族(補償)等年金における「男女差」の解消
今回の見直しで最も注目されるのが、遺族補償年金の受給要件における「夫と妻の格差是正」です。
夫にのみ課されていた年齢要件等の撤廃
現行制度では、労働者が亡くなった場合、妻は年齢に関係なく遺族補償年金を受給できますが、夫が受給するには「55歳以上」や「障害状態」といった厳しい要件がありました。
今回の建議では、夫にのみ課せられたこれらの支給要件を撤廃し、妻と同様の扱いにすることが適当とされました。
妻への「優遇措置」も見直しへ
一方で、男女平等の観点から、妻のみに認められていた優遇措置も見直されます。
具体的には、高齢や障害のある妻に対する「特別加算」については合理性がないとして廃止され、遺族が1人の場合の給付水準(給付基礎日額の175日分)に統一される方向です。
| 項目 | 現行制度 | 見直し案 |
|---|---|---|
| 夫の受給要件 | 55歳以上または一定の障害状態が必要 | 年齢・障害要件を撤廃 (妻と同じ条件へ) |
| 妻の特別加算 | 一定条件で加算あり | 廃止 (遺族1人の場合は一律175日分へ) |
※石綿健康被害救済法における特別遺族年金についても同様に見直されます。
2. 【時効】精神疾患等の請求時効を「5年」に延長
労災保険給付の請求権には「時効(通常2年)」がありますが、一部の疾病についてこれが延長されます。
労災認定においては、業務との関連性(業務起因性)を証明する必要がありますが、過労死やメンタルヘルス不調などは、発症から申請までの判断に時間を要することが多々あります。
そのため、以下の疾病等については、消滅時効期間が現行の2年から「5年」に延長されることになります。
- 脳・心臓疾患
- 精神疾患
- 石綿関連疾病 等
※労働基準法の災害補償請求権についても同様に延長が適当とされています。
3. 【適用】暫定任意適用事業の廃止と強制適用化
現在、個人経営の農業・林業・水産業の一部(従業員5人未満など)は、労災保険への加入が任意(暫定任意適用事業)となっています。
しかし、働き方の変化やセーフティネット確保の観点から、これらについても「暫定任意適用事業」を廃止し、原則として強制適用とする方針が示されました。
ただし、小規模事業主への事務負担や影響を考慮し、農林水産省と連携しながら、十分な準備期間(円滑な施行に必要な期間)が設けられる予定です。
家事使用人への適用
現在、労働基準法の適用外となっている「家事使用人」についても、今後労働基準法が適用されることになった場合には、合わせて労災保険法も強制適用することが適当であると明記されました。
4. その他の重要な見直しポイント
上記以外にも、実務に影響する細かな変更点が示されています。
- 特別加入制度の厳格化:
特別加入団体について、承認・消滅の要件を法令上明確化し、適切な運営(事務処理体制や財政基盤)を求めることとされました。 - 社会復帰促進等事業の不服申立て:
これまで認められていなかった特別支給金などの給付についても、審査請求や取消訴訟の対象となります。 - メリット制の継続と情報提供:
メリット制は継続されますが、電子申請を行っている事業主に対しては、労災の支給決定通知(給付種別や年月日など)やメリット収支率の基礎情報の提供が行われるようになります。
まとめ:法改正への備えは早めに
今回の建議は、これからの労働環境に合わせた大きなアップデートと言えます。
特に「時効の延長」は、過去に遡ってのリスク管理が必要になる可能性を示唆しており、企業側の労務管理の重要性がより一層高まります。
今後、この建議をもとに法律案要綱が作成され、国会での審議を経て正式に法改正が行われる予定です。
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