おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
最近、SNSやニュースで「育休もらい逃げ(育休中に退職すること)」が話題になっていますね。
働く側からすれば「権利だから当然」という意見もあれば、会社側からすれば「復帰前提の手当なのに…」というモヤモヤもあり、議論が尽きません。
この「もらい逃げ」のリスクや実態については、以前こちらの記事で詳しく解説しました。
あわせてご覧ください。
▶ 【社労士解説】「育休もらい逃げ」は違法?復帰せず退職されるリスクと会社ができる対策
さて、今回はその逆のパターンです。
「育休中に、会社から解雇を言い渡された(いわゆる育休切り)」というケースについてお話しします。
「育休中だからクビにはならないはず」と安心していると、足元をすくわれるかもしれません。
もし解雇されたら、給付金や保育園はどうなってしまうのでしょうか?
社労士が法律の根拠を交えて、正しい対処法を解説します。
【原則】育休中の解雇(育休切り)は法律で禁止されています
まず結論から言うと、原則として、育休中であることを理由にした解雇は法律で禁止されており、無効です。

これは「育児・介護休業法」および「労働基準法」によって強力に守られています。
- 育児・介護休業法 第10条:
育児休業の申出や取得を理由とする解雇その他の不利益な取扱いの禁止 - 労働基準法 第19条:
産前産後休業期間およびその後30日間の解雇制限
つまり、会社が「育休とられて人が足りないから」「戻ってきても席がないから」といった理由で解雇することは、明確な法律違反となります。
参考リンク:妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い(厚生労働省)
もし解雇されたら「育児休業給付金」と「保育園」はどうなる?
それでも万が一、会社と揉めて退職せざるを得なくなった場合、生活を支えるお金や保育園の入園はどうなってしまうのでしょうか。
ここが一番の不安ポイントかと思います。
1. 育児休業給付金は「離職日」でストップする
残念ながら、会社を辞めた日(離職日)を含む支給単位期間の一つ前の期間までで、育児休業給付金は終了します。

育児休業給付金はあくまで「雇用保険に加入しており、復職して働き続けること」を前提とした制度だからです。
退職後はもらえなくなるため、収入計画の大きな変更が必要になります。
参考リンク:育児休業給付を受給中に離職した皆さまへ(厚生労働省PDF)
2. その代わり「失業保険」はすぐに受給できる可能性大
育児休業給付金は止まりますが、代わりに「失業保険(基本手当)」の受給手続きが可能です。
特に「育休切り」のような会社側の一方的な都合による退職であれば、「会社都合退職(特定受給資格者)」として扱われる可能性が極めて高いです。
会社都合になれば、給付制限(待機期間)がなく、給付日数も手厚くなります。
また出産、育児等のために継続して30日以上賃金の支払いを受けることができない場合には、失業保険の給付を最長4年間延長することが可能です。「今すぐ働くのは無理」という方は、ハローワークに行って必ず延長申請をしておきましょう。
失業保険の「会社都合」がいかに手厚いかについては、こちらの記事で表を使って詳しく解説しています。
▶ 【知らないと損】失業保険を「会社都合」にして給付日数を増やす条件とは?
3. 保育園は「求職活動」事由への変更が必要
保育園の入園申請中に退職した場合や、入園中に退職した場合は、「就労」から「求職活動」へ認定事由を変更する必要があります。
自治体によって異なりますが、一般的には「退職後2ヶ月〜3ヶ月以内」に新しい就職先を決めれば、退園せずに済みます。
ただし、期限内に決まらない場合は退園となってしまうため、早めの保活・就活が必要です。
例外的に「育休中の解雇」が認められるケース
原則禁止と言いましたが、例外的に解雇が有効となってしまうケースもゼロではありません。
それは、「育休とは全く関係のない、正当な解雇理由がある場合」です。
- 事業の継続が不可能になった場合(会社の倒産、事業所の閉鎖など)
- 本人に重大な背信行為があった場合(横領、経歴詐称、重大な懲戒事由など)
- 整理解雇の4要件を満たす場合(会社が経営危機で、人員削減の必要性が認められる等)
ただし、これらは非常にハードルが高く、会社側が厳格な証明責任を負います。
単に「業績が悪いから」程度では、育休中の解雇は認められません。
「これって不当解雇?」と思ったらやるべき対処法
もし、納得できない理由で解雇を言い渡されたり、「自分から辞めてくれないか」と退職勧奨を受けたりした場合は、決してその場で合意してはいけません。
まずは以下の書類を会社に請求してください。
- 解雇通知書(解雇予告通知書)
- 解雇理由証明書(なぜ解雇するのか、具体的な理由が書かれたもの)
これらの書面は、後々ハローワークで「会社都合退職」を認めてもらうためや、不当解雇として争うための最強の証拠になります。
育休切りは、働くママ・パパにとって死活問題です。
「仕方ない」と泣き寝入りする前に、専門家へ相談することをお勧めします。
いのうえ社会保険労務士事務所(大阪全域・特に東淀川区、守口市は重点地域。)では、どんなお悩みでも相談に乗ります。(最近では車のバッテリートラブルなど)
