おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

最近、「仕事のストレスでメンタルを崩してしまい、退職を考えている」というご相談が非常に増えています。
実は今、病気やケガで会社を休んだ時にもらえる「傷病手当金」の支給額が、10年前に比べて約2倍(年間6,100億円)にまで激増しているのをご存知でしょうか? その受給理由の約4割が、うつ病や適応障害などの「メンタル系の疾患」だと言われています。

心身が限界を迎えている時、「もう会社に行きたくないから、今すぐ辞めてやる!」と勢いで退職してしまうお気持ちはよく分かります。
しかし、退職の手順やタイミングを少し間違えるだけで、もらえるはずだった数百万円単位の生活保障をドブに捨ててしまう、取り返しのつかない重大なリスクがあります。

そこで今回は、メンタル不調やケガで退職を余儀なくされた労働者を守るための「傷病手当金と失業手当(雇用保険)の最強の組み合わせ方」について、プロの社労士が詳しく解説いたします。

そもそも傷病手当金とは?基本の「4つの受給条件」


健康保険の制度である「傷病手当金」は、病気やケガで会社を休んだ日について、生活を保障するために支給されるお金です。(最長1年6ヶ月間、給与の約3分の2が支給されます)

受給するためには、以下の「4つの条件」をすべて満たす必要があります。

条件 具体的な内容と注意点
業務外の事由による病気やケガであること
※業務中や通勤中のケガは「労災」の扱いとなり、傷病手当金の対象外です。
仕事に就くことができない状態(労務不能)であること
※必ず医師の診察を受け、診断書等で「就労不可」の証明をもらう必要があります。
連続して3日間休み、4日目以降も休んでいること(待期期間)
※ここが一番間違えやすいポイントです!「2日休んで1日出勤」を繰り返しても条件は満たせません。必ず「3日連続」で休む必要があります。(土日や有給休暇を含んでもOKです)
休業期間中に給与の支払いがないこと
※給与が支払われている期間は受給できません(給与が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます)。

詳細な制度の概要については、全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページも必ずご参照ください。
傷病手当金とは(協会けんぽ公式サイト)

【超重要】退職日は絶対に出勤するな!運命を分ける休みの取り方


メンタル不調等で会社を退職する場合、傷病手当金を「退職後も継続して」もらうためのルールがあります。
それは、「退職日までに健康保険の加入期間が継続して1年以上あること」と、「退職する前に傷病手当金の受給要件(上記①~④)を満たしていること」です。

ここで実務上、悲惨な事態になるケースが後を絶ちません。
「最後の日くらいは挨拶に行こう」とか「引き継ぎのために最終日だけ出社しよう」と、退職日に1日でも出勤して給与が発生してしまうと、「退職日に労務不能であった」という条件が崩れ、退職後の傷病手当金が一切受け取れなくなるという致命的なペナルティに直面します。

正しい退職のステップは以下の通りです。

  1. 退職前に「連続3日間の休み(待期期間)」を完成させる。
  2. 退職日も「必ず欠勤(または傷病による有給等)」として休む。
  3. そのまま退職し、退職後も治療に専念する。

退職してしまってから「やっぱり傷病手当金をもらいたい」と思っても、退職後に連続3日の休みを作ったところで、すでに社会保険の資格を喪失しているため対象外となります。順番を間違えないよう、細心の注意を払ってください。

傷病手当金+失業保険の延長=最長「2年6ヶ月」の療養コンボ


さて、無事に退職し、傷病手当金を受け取りながら療養に入ったとします。
退職したら「失業手当(雇用保険)」ももらえるのでは?と思うかもしれませんが、傷病手当金と失業手当は、「働けない状態」と「今すぐ働ける状態」という相反する条件のため、同時には受給できません。手続きを放置すると、失業手当をもらう権利が消滅してしまいます。

そこで必ずやっていただきたいのが、ハローワークでの「受給期間の延長手続き」です。

失業手当は原則として「退職後1年以内」にもらい切らなければならないという期限があります。しかし、病気やケガで30日以上働けない場合は、ハローワークへ申し出ることで、この受給期間を最大3年間延長することができます。

つまり、ハローワークで受給期間の延長手続きをしておけば、まず傷病手当金で最長1年6ヶ月じっくり療養し、病気が治って「働ける状態」になってから、失業手当を最長約1年間受給する(合計で最長2年6ヶ月の生活保障を得る)という最強のコンボが可能になります。

この「延長の届け出」を出すか出さないかで、生活の安心感は雲泥の差になります。退職して落ち着いたら、必ずハローワークで手続きを行ってください。

※延長手続きの詳細は以下のサイトもご確認ください。
受給期間延長の申請期限を変更します

【よくある質問】傷病手当金と失業保険のQ&A


ここでは、当事務所によく寄せられる実務上の疑問をQ&A形式でまとめました。

Q1. 退職前に有給休暇を消化したいのですが、待期期間(連続3日間)に有給を含めても良いですか?

はい、問題ありません。待期期間の連続3日間には、公休(土日など)や有給休暇が含まれていても「休んだ」としてカウントされます。ただし、有給休暇を使って給与が支払われている期間は、傷病手当金そのものは支給されません(給与が優先されます)。有給消化が終わった後の欠勤日から手当が支給されます。

Q2. 別の病気になった場合、新しく傷病手当金をもらうことはできますか?

はい、全く異なる病気やケガであれば、新たに支給される可能性があります。ただし、以前の病気から派生したような同一または関連する傷病と判断された場合は、期間が通算されてしまうため注意が必要です。

Q3. 病気のふりをして傷病手当金をもらうことはできますか?

絶対にやめてください。働ける状態であるにもかかわらず医師を騙して診断書を書かせ、不正に手当を受給した場合、健康保険法違反による詐欺罪に問われ、受給額の全額返還と厳しい罰則が科される重大な犯罪行為です。制度は本当に療養が必要な方のために正しく利用しましょう。

※退職後、傷病手当金の継続給付中に1日でも働いたら、その時点で傷病手当金の継続給付は打ち切りとなります。理由は継続していないからです。ですので、それ以降傷病手当金を受給すれば不正受給となり罰則が待っていますので絶対にやめましょう。

まとめ:制度は正しく使い、しっかり療養しよう!


現代の社会はプレッシャーも大きく、誰でもメンタル不調や病気で働けなくなるリスクを抱えています。
だからこそ、私たちが毎月高い社会保険料や雇用保険料を払って支え合っている「傷病手当金」や「失業手当」というセーフティネットがあるのです。

退職する際は、勢いで辞めるのではなく、まずは医師の診断を受け、「退職前に連続3日休む」「退職日は必ず休む」「ハローワークで延長手続きをする」という正しいステップを踏んでください。これだけで、心置きなく治療に専念できる環境が整います。

「自分の場合はどうなるの?」「会社が離職票や手続きをしてくれない」など、少しでも不安がある方は、手遅れになる前にぜひ当事務所へご相談ください。
労働者の皆様の利益を守るため、親身にサポートさせていただきます。

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