おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

非正規雇用のスタッフを正社員に登用した際にもらえる「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」。
従業員のモチベーションアップと会社の助成金受給が両立する、非常に人気が高く使い勝手の良い制度ですが、その分「受給要件」は年々厳格化されています。

実は先日、お客様から「パートを正社員にして6ヶ月経つから申請したいんだけど、事情があって解雇通知を出しちゃったんだよね。今はまだ在籍してるから、これでももらえる?」という非常に際どいご相談を受けました。

今回は、最新のパンフレットに基づく正社員化コースの基本要件をおさらいしつつ、私が実際に労働局へ直接電話して確認した「解雇通知と助成金申請のリアルな関係(実体験)」について、社労士の視点から徹底解説いたします。

正社員化コースの「支給額」と「加算額」まとめ


まずは、有期雇用労働者(パートや契約社員など)を正規雇用労働者に転換した際にもらえる、基本的な助成額を確認しましょう。

【1人当たりの支給額】

転換のパターン 中小企業 大企業
有期雇用 → 正規雇用
※重点支援対象者の場合
80万円
(40万円×2期)
60万円
(30万円×2期)
有期雇用 → 正規雇用
※上記以外の場合
40万円
(40万円×1期)
30万円
(30万円×1期)
無期雇用 → 正規雇用
※重点支援対象者の場合
40万円
(20万円×2期)
30万円
(15万円×2期)
無期雇用 → 正規雇用
※上記以外の場合
20万円
(20万円×1期)
15万円
(15万円×1期)

※1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20名です。

【主な加算額(1事業所当たり1回のみ)】
さらに、制度を新設した場合などに以下の加算が受けられます。
・正社員転換制度を新たに規定した場合:20万円(大企業15万円)
・多様な正社員制度(勤務地限定等)を新たに規定した場合:40万円(大企業30万円)
・情報公表(しょくばらぼ等)を行った場合:20万円(大企業15万円)

※詳しい要件は、以下の厚生労働省のパンフレット(PDF)をご参照ください。
キャリアアップ助成金のご案内(厚生労働省PDF)

対象となる労働者と事業主の主な要件


受給するためには、労働者と事業主の双方が厳しい要件をクリアしなければなりません。

【対象となる労働者の主な要件】
・賃金の額や計算方法が正社員と異なる就業規則等の適用を「通算6ヶ月以上」受けて雇用されていること。
最初から正社員として雇用することを約束して雇い入れた労働者ではないこと(求人票などで最初から正社員前提の募集をしている場合は対象外になります)。

【対象となる事業主の主な要件】
・正社員転換制度を就業規則等に規定していること。
・転換後、6ヶ月以上の期間継続して雇用し、賃金を支給したこと。
・転換後6ヶ月間の賃金を、転換前6ヶ月間の賃金より「3%以上増額」させていること。

助成金における「正規雇用労働者」の定義


「パートをフルタイムにして、月給制にしたから正社員でしょ?」
実は、助成金の世界ではそれだけでは「正規雇用労働者」とは認められません。

本助成金において正規雇用労働者と認められるには、同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用され、かつ「賞与または退職金の制度」があり、さらに「昇給」が適用される労働者であることという厳しい条件があります。
「業績によっては賞与を支給しないことがある」という免責規定はOKですが、「賞与は支給しない」とハッキリ書かれている就業規則では、そもそも正社員として認められず、助成金は1円も出ません。

また、正社員化だけでなく、社内の賃金ルール全体を整えたい場合は、別のコースも非常におすすめです。以下の記事もぜひ参考にしてください。
【令和8年度最新版】これはおすすめ!キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)の受給要件と注意点

【実体験】申請期間中に「解雇通知」を出したらどうなる?


ここからが、私が実際に直面した現場でのリアルな事例です。
某企業様から、こんなご相談を受けました。

「12月1日にパートを正社員に転換した。5月31日でちょうど6ヶ月が経過するので、6月以降に助成金の申請をしたい。ただし、会社の事情で4月15日に対象労働者へ『6月30日付での会社都合解雇通知』を出してしまった。申請する時点(6月)ではまだ正社員として在籍しているが、これでも助成金はもらえるか?」

確かに、要件である「転換後6ヶ月の継続雇用と賃金支払い」は満たしており、申請期間中も籍はあります。
しかし、私はすぐに管轄の労働局へ電話をかけ、このケースについて直接担当官に確認を取りました。

労働局からの回答は、非常に明確かつ厳しいものでした。
「キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップと『長期的な雇用の安定』を目的とした制度です。したがって、申請の時点で解雇予告を行っており、その後も継続して正社員として雇用する見込みがない場合は、明確に『不支給』となります。もしこの事実を隠して申請し、受給した場合は『不正受給』として全額返還・ペナルティの対象になります。」

つまり、要件の期間(6ヶ月)だけを形式的に満たしていても、その後に雇用を継続する意思(実態)がなければ、助成金の趣旨に反するとして完全にアウトになるのです。

※不正受給に関する厳しい措置については、厚生労働省の以下のページでも警告されています。
厚生労働省|雇用関係助成金の不正受給について

【よくある質問】正社員化コースのQ&A


Q1. 正社員転換後に試用期間を設けてもいいですか?

ダメです。本助成金では、転換後に試用期間を設けた場合、試用期間中は「正社員転換が完了していない」とみなされます。試用期間は必ず「非正規雇用の期間中(転換前)」に済ませておく必要があります。

Q2. 従業員本人の希望で、転換後すぐに退職してしまった場合はどうなりますか?

転換後6ヶ月分の賃金を支払う前に自己都合退職してしまった場合は、要件を満たせないため不支給となります。もし6ヶ月経過後に自己都合退職した場合でも、タイミングによっては審査の対象外となる可能性があるため、労働局への確認が必要です。

まとめ:助成金は「雇用の安定」が絶対のルール!


いかがでしたでしょうか。
助成金をもらうためだけに形式的な手続きを行っても、労働局の目は誤魔化せません。
特に「解雇」が絡むケースは、助成金の根幹である「雇用の安定」という大原則に真っ向から反するため、非常に厳しい判断が下されます。

「このケースは申請できるの?」「要件を満たしているか不安」と迷われた場合は、自己判断で無理に申請を進めず、必ず専門家である社労士にご相談ください。
当事務所では、企業の状況に合わせた適正な助成金の活用を親身にサポートいたします。

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