おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。

長引く物価高騰や取引先の事情などにより、「仕事が激減してしまったけれど、せっかく育てた従業員を解雇したくない…」と悩まれている経営者様も多いのではないでしょうか。
そんな時に会社の強い味方となるのが「雇用調整助成金」です。

この雇用調整助成金ですが、令和8年(2026年)4月1日付で、支給要領やガイドブック、申請様式等が新しく更新されました。
助成金は年度が変わると要件やルールが細かく変更されることが多いため、古い様式のまま申請して「不備で突き返された!」とならないよう注意が必要です。

今回は、令和8年度の最新要領に基づき、雇用調整助成金の仕組みや受給するための条件、そして実務で一番間違えやすい「事前の計画届」や「残業相殺」のルールについて、社労士が分かりやすく徹底解説いたします。

【令和8年4月版】雇用調整助成金とは?受給のための3大要件


雇用調整助成金とは、景気の変動や産業構造の変化などの「経済上の理由」により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せずに「休業」「教育訓練」「出向」によって雇用を維持した場合に、支払った休業手当などの一部を国が助成してくれる制度です。

この助成金を正しく活用すれば、従業員を解雇せずに会社に留まってもらい、景気回復時に即戦力として事業をスムーズに再建できるという最大のメリットを得られます。

受給するためには、大前提として「雇用保険の適用事業主」であることに加え、主に以下の「3つの要件」をすべてクリアする必要があります。

要件の名称 具体的な内容とクリア基準
①生産量要件
(売上等の減少)
最近3か月間の「売上高」または「生産量」などの指標の月平均値が、前年同期と比べて10%以上減少していること。
②雇用量要件
(人員が増えすぎていないか)
最近3か月間の「雇用保険被保険者数」及び「派遣労働者数」の月平均値が、前年同期と比べて大きく増加していないこと。
・中小企業:10%を超えて、かつ4人以上増加していないこと
・大企業:5%を超えて、かつ6人以上増加していないこと
③休業規模要件
(しっかり休んでいるか)
判定基礎期間(原則1か月)における対象労働者の「所定労働延日数」に対して、「休業等の延日数」の割合が一定以上であること。
・中小企業:20分の1以上
・大企業:15分の1以上

※助成金の全体的な概要や最新のリーフレットについては、厚生労働省の公式ページをご参照ください。
厚生労働省|雇用調整助成金トップページ

もらえる金額はいくら?助成率と支給限度額まとめ


雇用調整助成金の助成額は、「会社が従業員に支払った休業手当(または教育訓練中の賃金)」に、企業規模に応じた「助成率」を掛けて計算されます。

【助成率】
・中小企業:3分の2
・大企業:2分の1

【支給上限額(1人1日あたり)】
8,870円(※雇用保険基本手当日額の最高額に連動。令和7年8月1日時点)

【教育訓練を実施した場合の加算額】
休業ではなく「教育訓練(職業に関する知識・技能の向上を目的とするもの)」を実施した場合は、通常の助成額に加えて、1人1日あたり1,200円(大企業も同額)が加算されます。
※さらに、累計の支給日数が30日に達した以降は、教育訓練の実施率が高い中小企業に対しては加算額が「1,800円」に引き上げられる制度もあります。

【支給対象となる日数】
・1年間(対象期間)において最大100日分
・過去に受給歴がある場合は、通算して3年間で最大150日分

【要注意】申請時の落とし穴!「計画届の事前提」と「残業相殺」


雇用調整助成金の申請実務において、絶対に間違えてはいけない2つの大きな落とし穴があります。ここをミスすると、助成金が不支給になってしまいます。

① 計画届は「事前」提出が絶対ルール!
休業や教育訓練を実施する前に、必ず労働組合(または労働者代表)と労使協定を結び、ハローワーク等へ「実施計画届」を事前提出し忘れると、どれだけ要件を満たしていても助成金は1円も支給されません。
事後提出は一切認められませんので、必ず「休業を開始する前日」までに提出を完了させてください。(※初回の届出は休業初日の2週間前までの提出が推奨されています)

② 「残業相殺」のルールに注意!
「一部の従業員を休業させて助成金をもらいながら、別の従業員には残業(所定外労働等)をさせている」という状況は、「休業させる一方で働かせる必要性が発生している」とみなされます。
そのため、助成対象となる休業等の延べ日数から、その判定基礎期間に行われた「残業・休日出勤などの時間分」が差し引かれます。これを「残業相殺」と呼びます。突発的な残業であっても例外なく相殺されるため、休業中の業務配分には細心の注意が必要です。

不正受給は絶対NG!厳格化されたペナルティ


労働局では、適正な支給を推進するため、事前予告なしの現地調査(事業所訪問や立入検査)を積極的に行っています。
「休業していると偽って実は出勤させていた」「雇用関係にない者を含めて申請した」など、故意に書類を偽造して不正受給を行った場合、受給額の全額返還に加えて「2割のペナルティ額」と「延滞金(年3%)」が課され、事業所名・代表者名が公表されるなど、企業としての信用を完全に失う重大なリスクがあります。悪質な場合は詐欺罪等で刑事告発されます。

助成金は、ルールを守って正しく活用することが何よりも重要です。

【よくある質問】雇用調整助成金の実務Q&A


令和8年4月1日版の最新ガイドブックをもとに、実務担当者様からよくいただくご質問をまとめました。

Q1. 設立して1年未満の会社ですが、申請できますか?

残念ながら対象外となります。生産量要件は「前年同期の3か月間」と比較して減少しているかを判定するため、比較対象となる前年同期に雇用保険適用事業所としての実績がない場合は申請できません。

Q2. 業績悪化中に「新卒採用」をして従業員が増えた場合、助成対象になりますか?

新規学卒者を採用したことで、雇用指標(人員数)が基準を超えて増加してしまった場合は、「雇用量要件」を満たさなくなるため、助成対象にはなりません。

Q3. 休業日に、自主的に出社して仕事をしている従業員がいますが、対象になりますか?

対象になりません。たとえ「ボランティア」や「自己研鑽」という名目であっても、実態として出社している以上は「休業」と認められないため、その日数分を除外して申請する必要があります。

Q4. 法令で義務付けられている安全衛生教育などを、教育訓練として申請できますか?

法令等で事業主に実施が義務付けられている教育(労働安全衛生法に基づく教育など)は、本来事業主が自らの負担で行うべきものとされているため、助成対象となる「教育訓練」には該当しません。

※より詳細な手続き方法やQ&Aについては、以下の最新版ガイドブック(PDF)をご確認ください。
雇用調整助成金ガイドブック(令和8年4月1日現在版)

まとめ:最新の要領・様式を確認して確実な申請を!


雇用調整助成金は、企業の危機を乗り越え、大切な従業員の生活を守るための非常に強力な制度です。
しかし、要件が細かく複雑であり、毎年のように要領や様式が更新されるため、自社だけで正確に手続きを行うのは大変な労力がかかります。

「うちの会社は要件を満たしているか知りたい」「休業協定書の書き方が分からない」「残業相殺の計算が複雑すぎる」とお悩みの経営者様・担当者様は、ぜひお早めに専門家である当事務所までご相談ください。
最新の令和8年度ルールに基づき、確実かつスムーズな申請代行をサポートいたします。

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