おはようございます。大阪市東淀川区の社労士、井上です。
企業や組織の不正を内部から告発する労働者を守る「公益通報者保護法」が大きく改正され、2025年6月4日に成立しました。施行日は2026年(令和8年)12月1日に定められています。
今回の改正は、これまでの私法上のルールにとどまらず、通報者への不利益取扱いに対する「刑事罰」の導入や、消費者庁の権限強化など、企業にとって極めて厳しいペナルティが課される内容となっています。今回は、この法改正の重要ポイントと、企業が急いで見直すべき労務管理上の留意点について解説します。
この記事で分かること
1. 解雇・懲戒への「刑事罰」導入と推定規定の恐怖
今回の改正で最も衝撃的なのが、公益通報を理由とした解雇や懲戒処分などの「不利益取扱い」に対して、新たに刑事罰が導入されたことです。
| 対象 | 罰則内容(不利益取扱いを行った場合) |
|---|---|
| 行為者(個人) | 6か月以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金 |
| 法人(企業) | 3,000万円以下の罰金 |
さらに恐ろしいのが、通報から1年以内の解雇等は「通報を理由としたものと推定される」という推定規定です。
もし、コンプライアンス違反をした労働者を正当に解雇したつもりでも、後になってその労働者が「1年以内に公益通報をしていた」と主張した場合、企業側が「通報が理由の解雇ではない」と客観的な証拠で反証できなければ、解雇は無効となってしまいます。
2. 300名超の企業は要注意!従事者指定と消費者庁の権限強化
常時使用する従業員数が300名を超える企業には、「公益通報対応業務従事者」の指定が義務付けられています。
改正法では、この義務に対する消費者庁の執行権限が大幅に強化されました。
新たに消費者庁に立入検査権や命令権が付与され、命令違反や検査拒否には刑事罰が科されます。また、指定された従事者には通報者の秘匿に関する厳格な守秘義務が課され、これに違反した場合も刑事罰(30万円以下の罰金)の対象となります。
単なる「窓口担当者」だけでなく、調査に関わる部署や経営陣への報告者など、業務に関わる全ての者を適切に指定し、運用体制を整備しなければなりません。
3. フリーランスへの保護拡大と「通報妨害行為」の禁止
働き方の多様化に伴い、企業の内部事情を知り得るフリーランス(特定受託業務従事者)も、新たに公益通報者の保護範囲に追加されました。
企業は、フリーランスからの通報窓口の整備や、契約時の周知対応を怠らないよう注意が必要です。
さらに、以下の「通報妨害行為」が法律で明確に禁止されました。
- 通報しない旨の合意の禁止:退職時の秘密保持契約などで通報を制限する条項は無効となります。
- 通報者探索の禁止:調査に必要な範囲を超えて、誰が通報したのかを特定しようとする行為は厳禁です。
4. 施行に向けて企業が取り組むべき4つの実務対応
2026年12月1日の施行に向けて、企業は以下の実務対応を急ぐ必要があります。
- エビデンス管理の徹底: 人事処分を行う際は、常に訴訟を想定し、処分の必要性を客観的に証明できる資料(業務日報、メール記録など)を整備する。
- 内部規程の全面見直し: 就業規則や内部通報規程に、フリーランスへの対応や通報者探索の禁止事項を反映させる。
- 外部専門家との連携体制: 利益相反を防ぐため、弁護士など第三者性のある専門家を関与させる。
- 全従業員への教育研修: 報復的な人事処分が個人の刑事責任に問われることを、経営層から現場の管理職まで徹底的に理解させる。
今回の法改正は企業にとって対応の負担が増す一方で、正しく運用すれば組織の自浄作用を高め、重大な法令違反を未然に防ぐ経営基盤の強化につながる最大のチャンスでもあります。
【参考リンク】
・消費者庁|公益通報者保護制度
内部通報規程の作成や就業規則の見直し、管理職向けの研修などでお困りの事業主様は、ぜひお早めに弊所へご相談ください。
コメントや相談したいことがある方はぜひ公式LINEからお気軽にご連絡ください。
- ✔️ 面倒な法改正の情報収集はこれ1つで完結!
- ✔️ 助成金・補助金の最新情報をいち早くお届け
- ✔️ チャットで気軽に労務相談・障害年金相談が可能
